16時間断食そのものに痩せる効果はあるのか

結論

16時間という枠そのものに体重を落とす作用は、いまのところ確認されていない。枠を作ると1日341kcal少なく食べていたという測定はあり、効いているのはその経路。摂取カロリーを揃えて比べた試験では差が出ていない。

「16時間あけると、体が脂肪を使うモードに切り替わる」。

16時間断食の説明としてよく見る形です。時計の針が16に届くかどうかで体の中身が変わる、という話になっています。

この記事で見たいのは1点だけです。枠そのものに効果があるのか、それとも枠を作ると食べる量が減るだけなのか。 この2つは、対策がまるで違います。

何と比べたかで、答えが変わる

時間制限食の研究には、比べ方が2種類あります。ここを混ぜると話が通じなくなります。

比べ方 何が分かるか
枠あり vs 枠なし(どちらも自由に食べてよい) 枠を作った結果として何が起きたか
枠あり vs 枠なし(どちらも同じカロリーを指示) 枠そのものに上乗せがあるか

痩せるかどうかを知りたいなら上の比べ方でいい。でも「16時間という時間に作用がある」という主張を確かめたいなら、下でなければ答えになりません。

カロリーを揃えると、差は出なかった

肥満の成人139人を、8時から16時のあいだだけ食べる群と、時間を制限しない群に分けた試験があります。期間は12か月です。

重要なのは、どちらの群も同じ食事量を指示されていた点です。男性は1日1,500〜1,800kcal、女性は1,200〜1,500kcal。

結果は、体重も体脂肪も代謝の指標も、時間制限を足したことによる上乗せは確認されませんでした。

指示を出さなかった試験でも

過体重・肥満の成人116人を対象にした12週間の試験もあります。12時から20時だけ食べる群と、1日3食を決まった時間に食べる群の比較です。こちらは摂取量の指示を出していません。

体重の減りは、時間制限の群が1.17%、対照が0.75%でした。数字としては前者が大きいものの、統計的な差はついていません。体重70kgの人で0.8kgと0.5kgにあたります。

では、なぜ痩せた人がいるのか

肥満の成人23人が、10時から18時のあいだだけ自由に食べる生活を12週間続けた研究があります。摂取量を減らす指示は出していません。

測ってみると、1日あたり341kcal少なく食べていました。 体重は12週間で2.6%減っています。

この341kcalが何を測った数字か。

正しい読み方 違う読み方
食べた量が341kcal少なかった 同じものを食べても341kcal吸収されなくなった
枠を作った結果として、自然にそうなった 我慢して341kcal減らした
出ていく側は測られていない 断食で代謝が上がって341kcal多く燃えた

動いたのは入ってくる側です。消費が増えたのではありません。

理屈も単純で、1日のうち8時間しか食べられないなら、朝食か夜食のどちらかが消えます。1食ぶんか、間食ぶんが減る。それが341kcalの正体です。

逆向きの結果を出した試験もある

結果は割れています。

肥満の成人90人(平均BMIは40近く)を対象にした14週間の試験があります。エネルギー制限に加えて、朝7時から15時までの8時間の枠で食べた群のほうが2.3kg多く減りました。 両群ともエネルギー制限をしているので、枠の上乗せを見た形です。

先の2試験と違うのは、枠が朝からである点です。

⚠️ ただし、この試験で有意差が出たのは体重だけで、体脂肪では出ていません。

時間制限食の試験を集めたメタ分析も、この点を整理しています。枠を作る側にカロリーの指示がなく、自由に食べてよかった試験のほうが、差が大きく出ていました。 カロリーを決めていた試験では、差は小さくなります。

つまり現時点で言えるのは、こうなります。

  • 食べる量が減る経路は、繰り返し測定されている
  • 枠そのものの上乗せは、あるとしても小さく、結果が一致していない

341kcalは、どれくらいか

比較の土台を置きます。体脂肪1kgは約7,200kcalです。

341kcalを毎日続けると、1週間で2,387kcal。体脂肪に換算すると週0.33kgほどになります(341kcalから逆算した見積もりです)。

ただし実際には、体は減った分だけ消費も下げてくるので、この通りには進みません。先の研究で12週間に減ったのは体重の2.6%でした。

身の回りのもので言うと、341kcalはこのあたりです。

もの 目安
菓子パン1個 約300 kcal
ビール500ml 1本+つまみ少々 約350 kcal
ごはん1杯+味噌汁+焼き魚の朝食 約400 kcal

1食ぶん、あるいは間食ぶん。 それが16時間断食で実際に減っていた量です。

代わりに、減る場所を直接決める

減っていたのは1食ぶんか間食ぶんでした。だとすれば、そこを直接決めても同じです。

同じ「1食ぶん減らす」を、どの形で取るか 1日の摂取の変化
16時間の枠を作る(自由に食べてよい条件で実測) 約 −341 kcal
枠は作らず、夜の1品を決めて外す 約 −300 kcal(菓子パン1個ぶん)

効いている場所は同じです。 だから、守れるほうを選べばいい。

時間で管理するのが得意な人は枠が向いています。量で管理するほうが楽な人は、枠を作らなくても同じところに届きます。どちらも「1日の収支」という同じ土俵の上にあります。

朝食を抜く形が続かないなら、夕食側を早めに閉じる形でも構いません。夜の時間帯そのものに太る作用があるわけではないためです。

では、どうするか

  1. 16時間という数字にこだわらなくていい。時計が16に届いたかどうかで体の中身は変わりません
  2. 枠を作るのは、続くなら有効な方法。食べる機会が1つ減るから効くと理解しておく
  3. 枠を守れなかった日を失敗と数えない。守った日に食べた量が増えていれば、そもそも差は出ません
  4. 枠が合わないなら、同じところを別の形で取る。下の表のとおり、狙う場所は同じです
  5. 飲み会や朝食を抜くのがつらいなら、無理に枠を作るより1日の赤字といくら見比べるかを決めるほうが続きます

気をつけること

  • 糖尿病の薬やインスリンを使っている方は、食事の間隔を空けると低血糖の危険があります。必ず主治医に相談してください
  • 妊娠中・授乳中の方、成長期の方には向きません
  • 過去に摂食障害を経験した方にとって、食事に厳しい規則を課す方法は負担になることがあります

まとめ

  • 摂取カロリーを揃えて比べた12か月の試験では、時間制限による上乗せは確認されなかった
  • 自由に食べてよい条件では、枠を作った人は1日341kcal少なく食べていた。動いたのは摂取側
  • 朝からの8時間枠で2.3kg多く減った試験もあり、結果は一致していない
  • 確実に効いているのは「食べる機会が1つ減る」経路のほう
  • 341kcalは菓子パン1個から朝食1食ぶん。枠でも、量の決め方でも、同じところに届く

16時間という数字は、守れるなら便利な目印です。守れなくても、失っているものはありません。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. RCTEffects of Time-Restricted Eating on Weight Loss and Other Metabolic Parameters in Women and Men With Overweight and Obesity: The TREAT Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine. 2020doi:10.1001/jamainternmed.2020.4153過体重・肥満の成人116人を、12時から20時のあいだだけ食べる群と、1日3食を決まった時間に食べる群にランダムに割り付けた12週間の試験。体重の減りは前者が1.17%、後者が0.75%で、統計的な差はなかった。どちらの群にも摂取量の指示はしていない。
  2. RCTCalorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss. New England Journal of Medicine. 2022doi:10.1056/NEJMoa2114833肥満の成人139人を、8時から16時のあいだだけ食べる群と時間を制限しない群に割り付け、12か月追った試験。どちらの群も男性1日1,500〜1,800kcal、女性1,200〜1,500kcalの食事を指示されている。体重・体脂肪・代謝の指標のいずれも、時間制限を足したことによる上乗せは確認されなかった。
  3. RCTEffectiveness of Early Time-Restricted Eating for Weight Loss, Fat Loss, and Cardiometabolic Health in Adults With Obesity: A Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine. 2022doi:10.1001/jamainternmed.2022.3050肥満の成人90人(平均BMIは40近く)を対象にした14週間の試験。エネルギー制限に加えて、**朝7時から15時までの8時間の枠**で食べる群のほうが2.3kg多く減った。著者らはこれを「1日あたり追加で214kcal減らすのに相当する」と表現している。**ただし有意差が出たのは体重だけで、体脂肪では有意でない。**上の2試験とは逆向きの結果で、枠が早い時間帯である点が異なる。
  4. ヒト実験Effects of 8-hour time restricted feeding on body weight and metabolic disease risk factors in obese adults: A pilot study. Nutrition and Healthy Aging. 2018doi:10.3233/NHA-170036肥満の成人23人が、10時から18時のあいだだけ自由に食べる生活を12週間続けた小規模な研究。摂取量を減らす指示は出していないのに、1日あたり341kcal少なく食べており、体重は2.6%減った。ランダム化されておらず、対照は別の試験の参加者。
  5. 系統的レビューTime-restricted eating improves health because of energy deficit and circadian rhythm: A systematic review and meta-analysis. iScience. 2024doi:10.1016/j.isci.2024.109000時間制限食の試験を集めたメタ分析。体重・腹囲の減少と、摂取エネルギーの不足が確認された。**時間制限食の側にカロリーの指示があった試験と、指示がなく自由に食べてよかった試験に分けると、後者のほうが差が大きく出ている。**体重についてのエビデンスの確実性は低いと評価されており、群ごとの平均で解析していることも限界として挙げられている。