ファスティングに、毎日の食事制限を超える効果はあるのか

結論

隔日断食と毎日のカロリー制限を1年比べた試験では、体重の減り方にも続けやすさにも差が出なかった。断食という形そのものに上乗せは確認されていない。短期間で落ちる分の多くはグリコーゲンと水。

「週末だけ断食する」「3日間のファスティングでリセットする」。

確かめたいのは1点です。断食という形そのものに、毎日少しずつ減らすのを超える効果があるのか。

1年かけて比べた試験がある

肥満の成人を3つの群にランダムに割り付け、1年追った試験があります。

群 食べ方
隔日断食 断食日は必要量の25%、翌日は125%
毎日の制限 毎日、必要量の75%
対照 何もしない

1年を平均すれば、前の2つは同じだけ削っている計算になります。違うのは削り方だけです。

結果は、体重の減り方に差が出ませんでした。 減ったあとの維持でも、心血管の指標でも差はありません。

続けやすさでも差は出なかった

断食を勧める説明でよく出てくるのが「毎日我慢するより、決めた日だけ我慢するほうが楽」という話です。

この試験では、そこも測られています。続けやすさに差はありませんでした。

隔日断食の群では、断食日に食べすぎる日と、翌日に食べきれない日の両方が起きていました。

数日の断食で落ちる分の正体

3日間のファスティングで2kg落ちた、という話はよく聞きます。これは本当に起きます。

ただ、内訳を見ると脂肪は多くありません。

落ちた分 正体
大部分 グリコーゲンと、それが抱える水
一部 消化管の中身
残り 脂肪

グリコーゲンはそれ自体の数倍の重さの水を一緒に抱えています。 だから糖質が入らなくなると、体重計は大きく動きます。

3日で1日あたり1,500kcalの赤字を作れたとしても、脂肪としては4,500kcal、つまり0.6kgほどです。残りは戻ります。

では、なぜ痩せた人がいるのか

断食で実際に減量できた人はいます。効いているのは形ではなく、合計です。

週に2日ほとんど食べなければ、その週の合計は当然減ります。16時間の枠を作ったときも同じで、枠を作った結果として摂取が減っていました。

食事の回数を変えた試験を集めたメタ分析でも、体重の変化に有意な差は出ていません。体が反応しているのは回数や時刻ではなく、入ってきた量のほうです。

代わりに、同じ削り方を毎日に散らす

1年の試験で差が出ないなら、選ぶ基準は「どちらが楽か」だけになります。

隔日断食 毎日の制限
1年後の体重 差なし 差なし
続けやすさ 差なし 差なし
断食日の負担 大きい 小さい
外食・予定との相性 日程が固定される 調整しやすい

同じ結果なら、予定に合わせやすいほうが実際には有利です。飲み会が断食日に当たったとき、毎日の制限ならその週の他で合わせられます。

断食のほうが性に合うなら、それも選択肢です。ただし「断食だから特別に落ちる」を理由に選ぶ必要はありません。

気をつけること

  • 糖尿病の薬やインスリンを使っている方は、絶食で低血糖の危険があります。必ず主治医に相談してください
  • 妊娠中・授乳中の方、成長期の方には向きません
  • 数日にわたる絶食は、体調を崩したときに気づきにくくなります。医療機関の管理がない状態で長時間の断食を行わないでください
  • 過去に摂食障害を経験した方にとって、断食は負担になることがあります

まとめ

  • 隔日断食と毎日のカロリー制限を1年比べた試験で、体重の減り方に差はなかった
  • 続けやすさにも差は出ていない
  • 数日の断食で落ちる分の大部分はグリコーゲンと水。戻せば戻る
  • 効いているのは断食という形ではなく、その期間の合計
  • 差が出ないなら、予定に合わせやすいほうを選べばいい

断食に特別な力は確認されていません。やりたければやっていい、という程度の話です。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. RCTEffect of Alternate-Day Fasting on Weight Loss, Weight Maintenance, and Cardioprotection Among Metabolically Healthy Obese Adults: A Randomized Clinical Trial. JAMA Internal Medicine. 2017doi:10.1001/jamainternmed.2017.0936肥満の成人を、隔日断食(断食日は必要量の25%、翌日は125%)、毎日のカロリー制限(必要量の75%)、何もしない群の3つにランダムに割り付け、1年追った試験。隔日断食は、毎日の制限に比べて体重の減り方でも維持でも心血管の指標でも優れていなかった。続けやすさにも差はなかった。
  2. 系統的レビューThe effects of eating frequency on changes in body composition and cardiometabolic health in adults: a systematic review with meta-analysis of randomized trials. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 2023doi:10.1186/s12966-023-01532-z食事の回数を変えたランダム化試験を集めたメタ分析。**主要アウトカムは体重の変化**で、高頻度と低頻度の差は−0.62kg(95%信頼区間 −2.76〜1.52)と有意ではなかった。ただし著者らは**エビデンスの確実性を「非常に低い」**と評価しており、16試験のうち15試験がバイアスリスク高とされている。
  3. ヒト実験Olsson KE, Saltin B. Variation in total body water with muscle glycogen changes in man. Acta Physiol Scand. 1970;80(1):11-18doi:10.1111/j.1748-1716.1970.tb04764.x19人を対象に、運動でグリコーゲンを枯渇させたあと糖質を多く摂らせた研究。全身の水分が2.2L、体重が2.4kg増えた。ここから**グリコーゲン1gあたり3〜4gの水**が伴うと見積もられている。過食の実験ではなく、枯渇と再充填の実験である点に注意。