電車で立っていると、何kcal多く使うのか

結論

座位と立位の消費エネルギーの差は1分あたり0.15kcal。通勤の往復1時間を立っても9kcalしか増えない。それなら座って体力を残し、降りてから1駅ぶん歩くほうが約67kcalで7倍効く。効くのは立つか座るかではなく、歩く距離のほう。

満員電車で座れなかった日に、「まあ、そのぶんカロリーを使うからいいか」と思ったことがあります。

いくら使っているのか、測られた数字があります。

差は1分あたり0.15kcal

座位と立位の消費エネルギーを比べた研究を46件、計1,184人ぶん集めたメタ分析があります。

結果は、差が平均0.15kcal/分(95%信頼区間 0.12〜0.17)。

男女で違いがあり、男性が0.19kcal/分、女性が0.1kcal/分。研究の種類でも少し開いて、観察研究では0.11、ランダム化試験では0.2でした。

分単位だとぴんと来ないので、通勤に当てはめます。

立っていた時間 上乗せされる消費
10分 1.5 kcal
30分(片道) 4.5 kcal
1時間(往復) 9 kcal
20日ぶんの往復 180 kcal

往復1時間で9kcalです。 アーモンド2粒ぶん。

月20日通勤して180kcal。体脂肪1kgは7,200kcalなので、1年立ち続けて体脂肪0.3kgという計算になります。

日々の体重は条件を揃えて測っても0.5%前後は動くので、この0.3kgは完全にその中に埋もれます。

ただし、同じ論文にもう一つの数字がある

ここで終わると「立っても無駄」になりますが、それは正確ではありません。

同じメタ分析の著者らは、こう計算しています。

体重65kgの人が、1日6時間を座位から立位に置き換えると54kcal/日。 摂取が変わらなければ、1年で体脂肪2.5kg相当になる。

さっきの0.3kgと、この2.5kg。どちらも同じ0.15kcal/分から出ています。違うのは時間の長さだけです。

電車の20分では効かず、1日6時間では効く。境目はここにあります。

だから、狙うなら乗車時間ではない

1日のうち座っている時間を思い浮かべてください。仕事、食事、テレビ、スマホ。

日常の活動による消費は、活動的な人では総消費の最大50%を占めるとされています。電車で立つかどうかより、残りの十数時間をどう過ごすかのほうが桁が違う。

もっとも、「1日6時間を立って過ごす」は簡単ではありません。立ち机がある職場は限られますし、脚への負担もあります。

現実的なのは、座り続ける時間を切ることのほうです。 1時間座ったら数分立つ、という形なら積み上がります。

数字を出すと、逆に気が楽になること

この記事でいちばん言いたいのはここです。

座れた日に、罪悪感を持つ必要はありません。 座って失うのは9kcalです。疲れている日に座って帰ることと、体重の増減は関係ありません。

「エスカレーターを使ってしまった」「今日は座りっぱなしだった」も同じです。落ち込むのは数字に合っていない反応になります。1回ぶんはどれも小さい。

効いているのは、1回の選択ではなく総量のほうです。総量は1日単位でも週単位でも取り返せます。

代わりに、座って1駅歩く

立つのをやめた先に、何を置くか。

通勤で使える1時間を、2通りに割り振ってみます。

使い方 上乗せされる消費
1時間ずっと立つ 9 kcal
座って体力を残し、降りてから1駅ぶん(約1km)歩く 約67 kcal(体重70kg)

歩行の消費は1kmあたり体重1kgにつき約0.96kcal。70kgなら1kmで約67kcalです。

同じ1時間で、7倍以上。

しかも後者は座っているぶん、降りたときに脚が残っています。立ち続けたあとに「さらに1駅歩く」のは、たいてい続きません。

つまり、座るのは我慢ではなく配分です。立つことに使うはずだった体力を、効くほうに回している。

では、どうするか

  1. 座れるなら座る。そのうえで、降りる駅を1つ手前にする。これで9kcalが67kcalになります
  2. 1駅が遠ければ、帰りだけでいい。週5日の帰りだけで週335kcal、月1,300kcal以上
  3. 混んでいて座れない日は、そのまま立っていればいい。9kcalは得しています
  4. 座り続ける時間を切る。1時間に1回、数分立つだけでいい
  5. 座りすぎの影響は体重とは別の話。健康の話として扱い、痩せるための手段にしない

私は一時期、意地でも座らないようにしていました。計算してみて、あれは体重には1gも効いていなかったと分かりました。取り越し苦労だったので、いまは座るかどうかより歩数のほうを気にしています。

まとめ

  • 座位と立位の消費の差は、46研究のメタ分析で1分あたり0.15kcal
  • 通勤の往復1時間で9kcal。月20日でも180kcal、1年で体脂肪0.3kg
  • 同じ論文は、1日6時間の置き換えなら54kcal/日、年2.5kg相当と計算している
  • 違いは時間の長さだけ。電車の20分では効かず、生活全体の座位時間では効く
  • 座れた日に罪悪感を持つ必要はない。座って1駅歩けば、立ち続けるより7倍効く

立つか座るかで悩むより、降りる駅を1つ手前にするほうが早いです。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 系統的レビューDifferences of energy expenditure while sitting versus standing: A systematic review and meta-analysis. European Journal of Preventive Cardiology. 2018;25(5):522-538doi:10.1177/2047487317752186座位と立位の消費エネルギーを比べた46研究・計1,184人のメタ分析。差は平均0.15kcal/分(95%信頼区間 0.12〜0.17)。男性0.19kcal/分、女性0.1kcal/分で、男女差がある。観察研究では0.11kcal/分、ランダム化試験では0.2kcal/分とやや開く。著者らは体重65kgの人が1日6時間を座位から立位に置き換えると54kcal/日になると計算している。
  2. ヒト実験Energy expenditure differences across lying, sitting, and standing positions in young healthy adults. PLOS One. 2019doi:10.1371/journal.pone.0217029横になる・座る・立つの3つの姿勢で消費エネルギーを測った研究。姿勢を変えたときの差が、実測でどの程度かを確認するために参照した。
  3. 総説Non-exercise activity thermogenesis (NEAT): a component of total daily energy expenditure. Journal of Exercise Nutrition & Biochemistry. 2018;22(2):23-30doi:10.20463/jenb.2018.0013運動以外の身体活動による消費についての総説。立つ・歩くといった日常の動作の合計は、活動的な人では総消費の最大50%を占める。1回あたりは小さくても、総量では大きくなるという論点の根拠。