散歩で「激ヤセ」は起きるのか。消費カロリーを計算してみます

結論

歩行の消費は体重1kgあたり1kmで約0.96kcal。70kgの人が30分歩いて上乗せされるのは80〜130kcal程度。歩数計を使った試験9件をまとめた減量幅は平均1.27kg、週あたり0.05kgで、計算値の半分。散歩で激ヤセは起きないが、体重以外の理由で続ける価値はある。

「毎日1時間歩いたら10kg痩せました」という話をよく見かけます。

実際どれくらい減るのか、計算してみます。

歩行の消費は、1kmあたり体重の約1%

実地での歩行の消費は、体重1kgあたり1kmで約0.96kcalと報告されています。平らなトレッドミル上より約30%多い数字です。地面の凹凸や信号での加減速があるぶんですね。

覚えやすく言うと、1km歩いて、体重の数字とだいたい同じkcal。70kgの人なら1kmで約67kcalです。

⚠️ この値を測った研究の参加者は、時速5.7〜5.9kmとやや速めに歩く徒歩通勤者20人です。ゆっくり歩く場合は、ここより小さくなる可能性があります。

では30分歩くと何kmか。普通の速さ(時速4〜5km)なら2〜2.5kmです。

体重 30分(2〜2.5km)の消費
60kg 115〜145 kcal
70kg 135〜170 kcal
80kg 155〜190 kcal
90kg 175〜215 kcal

ただしこれは総量です。歩かずに座っていても、その30分で安静時の消費(70kgなら約35kcal)は起きています。

散歩によって上乗せされたぶんを知りたいなら、そこを引く必要があります。70kgで30分なら、およそ100〜135kcal。

おにぎり1個より少し少ないくらいです。

毎日続けたら、計算上いくら減るか

70kgの人が毎日30分歩いて、上乗せが約120kcalとします。

  • 1週間:120 × 7 = 840kcal
  • 体脂肪1kgは7,200kcalなので、週あたり0.12kg
  • 1年続けて、約6kg

「激ヤセ」ではありませんが、無視できる量でもない。少なくとも計算上は。

実際に測ると、その半分

歩数計を使った歩行プログラムの試験を9件、計307人ぶんまとめたメタ分析があります。

結果は、体重の変化が平均-1.27kg(95%信頼区間 -1.85〜-0.70kg)。週あたりに直すと0.05kgでした。

さきほどの計算値(週0.12kg)の、半分以下です。

なぜ計算より小さいのか

理由は2つ考えられます。

1つめ。歩いたぶん、他の場面で動かなくなる。これは減量中に活動量が落ちるのと同じ現象です。30分歩いた日の夕方は、少し疲れています。階段よりエスカレーターを選ぶ。夜は早めに座る。この差は測りにくいのですが、確実に存在します。

2つめ。歩いたぶん、少し多く食べる。「今日は歩いたから」でコンビニに寄れば、120kcalは一瞬で消えます。おにぎり1個です。

どちらも意志の弱さではありません。上乗せが100kcal台だから、簡単に相殺されるだけです。

では「1日1万歩」は

歩数の目標値そのものについても試験があります。1日12,000歩を目標にしたランダム化比較試験では、歩数を満たすだけでは体組成の改善に不十分で、強度を組み合わせる必要があったと報告されています。

「歩数さえ稼げばいい」ではない、ということです。

散歩に意味がないのか、というと

そうではありません。ただし、理由を体重に置かないでください。

日常の活動による消費は、活動的な人では総消費の最大50%を占めるとされています。散歩そのものの120kcalより、歩く習慣がある生活と、ない生活の差のほうがずっと大きい。

それに散歩には、他の運動にない性質があります。

  • 続く。準備がいらない、着替えもいらない、痛くならない
  • やめてもゼロにならない。ジムは行かない週があると0になりますが、散歩は「今日は10分」ができる
  • 体重以外の指標(血圧、血糖、気分)への効果は、体重より確実です

歩数を増やすことに期待したくなりますが、体重を動かすのは食事のほうです。ただ、散歩が途切れた週は食事も崩れやすい。 土台としては効いています。

代わりに、散歩を移動に混ぜる

「運動としての散歩」を時間を取ってやるのと、移動のついでに歩くの。続き方が違います。

やり方 続くか 上乗せ
1日30分、散歩の時間を確保する 忙しい日に飛ぶ 約120 kcal
1駅手前で降りる・遠いスーパーに行く 飛ばない(移動は毎日あるので) 1kmあたり約67 kcal

上乗せの量は似た桁です。差がつくのは、やらない日が出るかどうか。

散歩の時間を取る形だと、忙しい週にまるごと消えます。移動に混ぜてしまえば、そもそも毎日発生するので消えません。

実際、歩数計を使った試験のメタ分析で減量幅が計算値の半分だったのは、続かない日があるぶんも含めた数字と読めます。毎日発生する形にすれば、そこが埋まります。

では、どうするか

  1. 散歩の時間を取るより、移動に混ぜる。1駅手前、遠いほうの店、階段
  2. 歩数の目標は、いまの実績+2,000歩程度から。いきなり1万歩は続きません
  3. 体重を落とす計画の主軸は食事に置く。散歩は週0.05kgぶんの補助として足す
  4. 歩いた日も、食べる量はいつも通りでいい。上乗せは100kcal台です
  5. 歩けなかった日は、翌日いつも通りに戻すだけ。失われるのは120kcalです

まとめ

  • 歩行の消費は1kmあたり体重1kgにつき約0.96kcal。70kgなら1km約67kcal
  • 30分歩いて上乗せされるのは、安静時ぶんを引くと100〜135kcal程度
  • 計算では週0.12kgだが、試験をまとめた実測は週0.05kg。動かなくなる・食べる、で相殺される
  • 歩数を満たすだけでは体組成が変わらなかった試験もある
  • 散歩の価値は1回の消費ではなく、続くことと日常の活動量にある

散歩で急に痩せることはありません。ただ、痩せないから意味がない、でもありません。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 系統的レビューA meta-analysis of pedometer-based walking interventions and weight loss. Ann Fam Med. 2008;6(1):69-77doi:10.1370/afm.761歩数計を使った歩行プログラムの試験9件・計307人をまとめたメタ分析。体重の変化は平均-1.27kg(95%信頼区間 -1.85〜-0.70kg)、週あたりに直すと0.05kg。期間が長い試験ほど減量幅が大きかった。参加者の73%が女性。
  2. ヒト実験Perspectives on exercise intensity, volume, step characteristics and health outcomes in walking for transport. Front Public Health. 2022doi:10.3389/fpubh.2022.911863徒歩通勤を習慣にしている中年の男女20人を対象に、実際の通勤路で酸素摂取量とエネルギー消費を測定した研究。実地の歩行では体重1kgあたり1kmで約0.96kcalを消費し、平らなトレッドミル上の歩行より約30%多い。この記事の計算はこの数字を使った。**ただし対象の歩行速度は時速5.7〜5.9kmと速め(約6メッツ)で、ゆっくり歩く場合にそのまま当てはめられるとは限らない。**
  3. RCTIs the goal of 12,000 steps per day sufficient for improving body composition and metabolic syndrome? The necessity of combining exercise intensity: a randomized controlled trialdoi:10.1186/s12889-019-7554-y1日12,000歩の目標だけで体組成が改善するかを調べたランダム化比較試験。歩数を満たすだけでは不十分で、強度を組み合わせる必要があったとしている。歩数の目標値そのものに効果があるわけではない、という論点の根拠。
  4. 総説Non-exercise activity thermogenesis (NEAT): a component of total daily energy expenditure. Journal of Exercise Nutrition & Biochemistry. 2018;22(2):23-30doi:10.20463/jenb.2018.0013日常の活動による消費エネルギーについての総説。運動以外の身体活動は、活動的な人では総消費の最大50%を占めると報告されている。散歩の価値を「1回の消費」ではなく日常の活動量として捉える根拠。