小分けにして食べると、代謝は上がるのか

結論

食事による消費は食べた量に比例するので、同じ量を分けても合計は変わらない。回数を変えた試験でも体組成に差は出ていない。小分けが効くとすれば、代謝ではなく間食が減るかどうかという行動の側。

「少量を何回かに分けて食べたほうが、代謝が落ちない」。

ボディメイクの文脈でよく出てくる言い方です。理屈としては、食べるたびに代謝が上がるから、回数を増やせばその回数ぶん得をする、という形になっています。

食事による消費は、量に比例する

食べると体温が上がり、消化と吸収でエネルギーを使います。これを食事誘発性熱産生といいます。

大きさは摂取エネルギーの10%前後です。2,000kcal食べれば約200kcal。

ここが肝心なところで、この10%は食べた量に比例します。 回数ではありません。

食べ方 1食あたり 1日の合計
600kcal × 3回 約60 kcal 約180 kcal
360kcal × 5回 約36 kcal 約180 kcal
1,800kcal × 1回 約180 kcal 約180 kcal

どう割っても同じです。回数を増やすと1回あたりが小さくなるので、合計は変わりません。

実際に比べた試験でも差は出ていない

理屈だけでなく、測った結果もあります。

食事の回数を変えたランダム化試験を集めたメタ分析があります。体重の変化に有意な差はありませんでした(差は−0.62kg、信頼区間 −2.76〜1.52)。

別のメタ分析では、回数が多いほうが有利という結果が一度出ています。ただし感度分析をすると、1つの研究に引っ張られていたことが分かりました。

どちらの解析も、証拠としては強くありません。 前者では著者らが確実性を「非常に低い」と評価しています。回数に大きな差がある、という結果も出ていませんが、無いと言い切れるほどでもない、というのが正確なところです。

では、小分けに意味はないのか

代謝の話としては意味がありません。行動の話としては、意味がある場合があります。

小分けが効く場面と、効かない場面を分けます。

場面 小分けにすると
食間に間食してしまう 間食のぶんが減る。効く
夕食が遅く、空腹で食べすぎる 夕方に1回入れると落ち着く。効く
もともと間食をしない 合計は変わらない。効かない
小分けの回数が増えて総量も増える 逆効果

つまり、小分けは「間食を置き換える」形でだけ効きます。 3食に2回足すのではなく、3食の一部を分けて夕方に回す、という形です。

代わりに、分ける中身を選ぶ

同じ分けるなら、何を分けるかで結果が変わります。

38種類の食品を240kcalずつ食べて満腹感を比べた研究では、同じカロリーでも満たされ方が最大7倍違いました。

夕方に足すもの 目安 夕食への効き方
菓子パン 約300 kcal 空腹は少し戻るが、すぐ減る
ゆで卵1個 約80 kcal 夕食まで持ちやすい
サラダチキン1つ 約110 kcal 同上

夕食が遅くなると分かっている日に、夕方でゆで卵1個。これだけで夕食の量は落ち着きます。分けたぶん合計が増えないのは、足したものが小さいからです。

では、どうするか

  1. 代謝を上げる目的で回数を増やすのはやめて、合計のほうを決める
  2. 間食が止まらない人だけ、3食の一部を分けて夕方に回す。足すのではなく分ける
  3. 分けるなら、満腹感が長いものを選ぶ。ゆで卵1個80kcalで夕食まで持ちます
  4. 夕食が遅い日は、夕方に1回入れておく。夜の時刻そのものは問題ではありません
  5. 回数を増やした週の合計を1度だけ数える。増えていたら形を戻す

まとめ

  • 食事による消費は摂取量の10%前後で、量に比例する。回数で変わらない
  • 600×3回でも360×5回でも、合計は同じ約180kcal
  • 回数を変えた試験を集めたメタ分析でも、体組成に差は出ていない
  • 小分けが効くのは「間食を置き換える」形のとき。足すと逆効果
  • 分けるなら満腹感の長いものを選ぶ。同じカロリーで7倍の差がある

回数は自由でいい、というのがここでも答えになります。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 系統的レビューThe effects of eating frequency on changes in body composition and cardiometabolic health in adults: a systematic review with meta-analysis of randomized trials. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 2023doi:10.1186/s12966-023-01532-z食事の回数を変えたランダム化試験を集めたメタ分析。**主要アウトカムは体重の変化**で、高頻度と低頻度の差は−0.62kg(95%信頼区間 −2.76〜1.52)と有意ではなかった。ただし著者らは**エビデンスの確実性を「非常に低い」**と評価しており、16試験のうち15試験がバイアスリスク高とされている。
  2. 系統的レビューEffects of meal frequency on weight loss and body composition: a meta-analysis. Nutrition Reviews. 2015;73(2):69-82doi:10.1093/nutrit/nuu017回数が多いほうが有利という結果が一度は出たが、感度分析で1つの研究に引っ張られていたことが判明し、確かな効果とはされていない。
  3. ヒト実験A satiety index of common foods. European Journal of Clinical Nutrition. 199538種類の食品を240kcalずつ食べてもらい、2時間の満腹感を比べた研究。1品あたり11〜13人と小規模。同じカロリーでも満腹感は最大7倍違った。小分けにするなら何を分けるかで結果が変わることを示している。