「食べるのを我慢したほうがいい」は、嘘でも本当でもある
赤字がなければ減らないという意味で「我慢は必要」は本当。ただし我慢の量と減り方は比例しない。同じ重さでカロリーの低いものに替えると、満腹感を落とさずに摂取が減る。我慢の量ではなく向きを変えるほうが効く。
「痩せたいなら我慢しなさい」。
この言い方が厄介なのは、半分当たっていることです。完全な嘘なら剥がせば済みますが、そうはいきません。
当たっている部分と、外れている部分を分けます。扱うのは我慢の量と減り方の関係です。
当たっている部分
入ってくる量が出ていく量を下回らなければ、体脂肪は減りません。ここに例外はありません。
好きなだけ食べて減ることはないので、「何かを減らす必要がある」は本当です。
外れている部分
外れているのは、我慢の量と減り方が比例するという部分です。
減量を始める前の私にとって、「我慢」はこういう水準でした。
- ラーメンを特盛にしない
- 唐揚げを20個は食べない
本人としては我慢しています。つらさもある。それでも収支は大幅なプラスでした。
麺を1.5玉から1玉に戻して減るのは150kcal前後です(麺の量から逆算した見積もりです)。一方、その食事そのものが1食で1,000kcalを超えていれば、150kcal引いても赤字にはなりません。
我慢はしている。収支は動いていない。 この状態が一番つらい形だと思っています。
我慢を増やさずに、赤字を作れる
ここで効いてくるのが、人の食べ方の癖です。
食品のエネルギー密度(同じ重さあたりのカロリー)を下げた研究を集めたメタ分析があります。提供されるカロリーを100kcal下げると、その日の摂取は約77kcal減っていました。 別の食べ物での埋め合わせは小さく、統計的にはっきりしませんでした。
この数字が何を測ったものかを書いておきます。
| 正しい読み方 | 違う読み方 |
|---|---|
| その日に食べた量が77kcal少なかった | 我慢して食べなかった |
| 食べた「重さ」はほぼ同じ | 食事の量が減って空腹になった |
| 本人は減らされたと気づいていない | 意志の力で減らした |
重さで満足しているので、カロリーだけ下げても気づかれない。 これが使えます。
満腹感あたりのカロリーには7倍の差がある
38種類の食品を240kcalずつ食べてもらい、その後の満腹感を比べた研究があります。1品あたり11〜13人という小規模なものです。
最も高かったゆでじゃがいもは、最も低かったクロワッサンの約7倍でした。
同じ240kcalで、満たされ方が7倍違う。選ぶものを変えるだけで、我慢の量が変わります。
代わりに、我慢の向きを変える
引き算で我慢するのをやめて、足し算に替えるやり方があります。
| 引き算の我慢 | 足し算の置き換え | |
|---|---|---|
| やること | 食べたいものを減らす | 満腹感の安いものを先に足す |
| 例 | ラーメンを並盛にする | ゆで卵や茹でた鶏むね肉を1品足す |
| 効く量 | 約 −150 kcal(麺半玉ぶん) | 主食や揚げ物が自然に減る |
| つらさ | 残る | ほぼ無い |
私のいまの「我慢」は、後者の形に収まっています。
ゆで卵をいつもより多く食べる。夕食に胸肉の茹で鶏を足す。これは我慢と呼べるものではありません。 それでも1日の収支は赤字になります。
もう1つ変わったことがあります。以前ほどラーメンを食べたいと思わなくなりました。 これは我慢の結果ではなく、食べ方が変わったあとに勝手に起きたことです。
減らす量を決めるための枠の作り方は、食事は制限するものではなく管理するもののほうに書きました。この記事で扱っているのは、その枠の中で何を選ぶかです。
では、どうするか
- 我慢の量ではなく、1日の収支を見る。我慢していても赤字でなければ減りません
- 減らす前に足す。満腹感の安いものを1品先に入れると、残りが自然に減ります
- 同じ重さでカロリーの低いものに替える。研究では100kcal分下げて摂取が77kcal減りました
- つらい我慢が続いているなら、やり方を疑う。効いている我慢は、そこまでつらくなりません
- 食べたい日は枠の中で食べる。週の合計で合わせれば収支は守れます
気をつけること
ここまでは「食べる量を選べる人」の話です。
食事を抜くこと自体が目的になっていたり、食べたあとに強い罪悪感が出る場合は、別の問題になります。 体重を減らす工夫ではどうにもならないので、専門の医療機関にご相談ください。
極端に食べない状態が続くと、筋肉が落ちて消費そのものが下がります。減量としても割に合いません。
まとめ
- 赤字がなければ減らない。「何かを減らす必要がある」は本当
- ただし我慢の量と減り方は比例しない。つらくても収支が動いていないことはある
- 人は食事の重さで満足する。カロリーを100kcal下げても、摂取は77kcalしか戻らなかった
- 同じ240kcalでも、満腹感には最大7倍の差がある
- 効くのは我慢の量を増やすことではなく、向きを変えること
我慢が足りないのではなく、我慢する場所が違っていることのほうが多いと思っています。
出典
この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。
- 系統的レビューCalorie reformulation: a systematic review and meta-analysis examining the effect of manipulating food energy density on daily energy intake. 2022doi:10.1186/s12966-022-01287-z食品のエネルギー密度(同じ重さあたりのカロリー)を下げた研究を集めたメタ分析。提供されるカロリーを100kcal下げると、その日の摂取エネルギーは約77kcal減っていた。別の食べ物での埋め合わせは小さく、統計的にはっきりしなかった。
- ヒト実験A satiety index of common foods. European Journal of Clinical Nutrition. 199538種類の食品を240kcalずつ食べてもらい、2時間の満腹感を比べた研究。1品あたり11〜13人と小規模。ゆでじゃがいもが最も高く、クロワッサンの約7倍だった。同じカロリーでも満腹感が大きく違う。