同じ量を食べるなら、よく噛んでも早食いでも太りやすさは変わりません

結論

ゆっくり食べると摂取量が減るという結果は、すべて「好きなだけ食べてよい」条件で出たもの。おかわりができる場面では効くが、量が先に決まっている食事では速さを変えても総量は変わらない。食べすぎる自覚があるなら、噛み方よりよそう量と炊く量を決めるほうが確実。

「よく噛んで食べなさい」と言われて育った人は多いと思います。

結論から言うと、ゆっくり食べると太りにくい場面はあります。 ただし、思われているより限定的です。

お題を正確にすると、答えが変わる

2つの問いが混ざっています。

問い①:同じ量を食べたとき、噛む回数で太りやすさに差が出るか

問い②:噛む回数を増やすと、食べる量が変わるか

世の中で語られているのは①の形ですが、研究が示しているのはほぼ②です。

ベジファーストのときと同じ構図で、効いている場所が思われているのと違う話です。

22研究をまとめると、摂取量が減っていた

食べる速さと摂取エネルギーを扱った22研究の系統的レビューとメタ分析があります。

結果は、ゆっくり食べた条件のほうが摂取エネルギーが少ない。標準化平均差0.45(95%信頼区間 0.25〜0.65)で、速さの変え方を問わず同じ方向でした。

実際の量で見た研究もあります。好きなだけ食べてよい食事を24回観察したもので、ゆっくり食べた食事では速く食べた食事に比べて、

  • 食べた量が平均22%(84g)少ない
  • 摂取エネルギーが13%(71kcal)少ない

つまり、効いているのは食べる量が減ったことです。同じ量を食べた場合の話ではありません。

では①の答えは

同じ量を食べるなら、差はほとんどありません。

噛むことで食後のエネルギー消費(食事誘発性熱産生)が増える、という研究はあります。ただしこの項目は1日の消費の約10%を占めるもので、そのうちの増加分となると、ごくわずかです。

1日2,000kcal消費する人なら、この項目は約200kcal。そこが数%動いても、数kcalです。

だから、早食いだったことを後から悔やむ必要はありません。 食べてしまった量が同じなら、速さで結果は変わりません。

②が効く場面は、限られています

ここが大事なところです。

これらの研究はどれも、「好きなだけ食べてよい」条件で行われています。 参加者の前に食べ物を置いて、満足するまで食べてもらい、その量を測る。

つまり示されたのは、おかわりができる場面では、ゆっくり食べたほうが総量が少なくなるということです。

日常の食事の多くは、そうなっていません。

場面 よく噛むと効くか
バイキング、食べ放題 効く。おかわりの手が止まりやすい
ご飯おかわり自由のランチ 効く。同じ理由
家で、よそったぶんを食べる ほぼ効かない。量はもう決まっている
コンビニ弁当、定食 ほぼ効かない。同じ

量が先に決まっている食事では、速さを変えても食べる量は変わりません。 皿にあるものを食べ終わるだけなので。

1食71kcalという数字は、前者の場面で出たものです。後者に持ってくると、効果はほぼゼロになります。

一番いい知らせは、空腹感のほう

このメタ分析には、もう一つ結果があります。

食事終了時から3.5時間後までの空腹感に、有意な差はありませんでした。

これは実務的に大きい話です。摂取が減る方法はいくらでもありますが、その多くは空腹と引き換えです。ゆっくり食べることは、我慢を増やさずに量が減る数少ない方法かもしれない、ということになります。

ただし、効かない人もいる

標準体重の35人と、過体重・肥満の35人を対象にした試験があります。同じ昼食を、ゆっくり食べる条件と速く食べる条件で比べたものです。

摂取エネルギーが有意に減ったのは、標準体重の群だけでした。過体重・肥満の群では差が出ていません。

理由はこの試験からは分かりません。ただ、「誰にでも効く方法」ではないことは知っておいていいと思います。やってみて量が減らないなら、他の手を使うほうが早い。

代わりに、量のほうを先に決める

「早食いだと、つい食べすぎてしまう」という自覚がある人は多いと思います。 そこへの対処としては、噛み方より量の決め方のほうが確実です。

やること 効く場面 確実さ
一口ごとに箸を置く おかわりができる場面だけ 場面による
よそう量を固定する どこでも 確実
炊く量を減らす 家の食事すべて 確実

ご飯を1膳ぶんだけよそって、おひつを食卓に出さない。あるいは、そもそも多めに炊かない。

これなら速さと関係なく量が決まります。早く食べても、遅く食べても、皿にあるぶんで終わる。

噛む回数を意識し続けるのは、まず続きません。一方、炊く量を減らすのは1回決めれば終わりです。

私自身はかなりの早食いです。直そうとしたことはなくて、「これ以上は食べない」と決めておくほうで回避しています。 速さは変えられませんでしたが、量なら決められました。

では、どうするか

  1. 家の食事は、よそう量を先に決める。おかわりの器を食卓に出さない
  2. 炊く量そのものを減らす。残りを食べてしまう経路が消えます
  3. バイキングや食べ放題では、ゆっくり食べる。ここは効きます
  4. 定食やコンビニ弁当で、速さを気にする必要はありません。量はもう決まっています
  5. 早食いを直そうとして失敗しても、気にしなくていい。直すべきは量のほうです

まとめ

  • 同じ量を食べるなら、噛む回数で太りやすさはほとんど変わらない
  • 効いているのは「食べる量そのものが減る」経路。22研究のメタ分析が示しているのはこちら
  • ただしその研究はどれも「好きなだけ食べてよい」条件。バイキングや食べ放題では効く
  • 量が先に決まっている食事では、速さを変えても総量は変わらない
  • 食べすぎる自覚があるなら、噛み方より「よそう量」「炊く量」を決めるほうが確実

噛む回数を数えるより、炊く量を1合減らすほうが1回で済みます。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 系統的レビューA systematic review and meta-analysis examining the effect of eating rate on energy intake and hunger. American Journal of Clinical Nutritiondoi:10.3945/ajcn.113.081745食べる速さと摂取エネルギーを扱った22研究の系統的レビューとメタ分析。ゆっくり食べた条件のほうが摂取エネルギーが少なかった(標準化平均差0.45、95%信頼区間 0.25〜0.65)。速さの変え方を問わず同じ方向だったが、研究間のばらつきは大きい。一方、食事終了時から3.5時間後までの空腹感には有意な差がなかった。
  2. ヒト実験Consistent effect of eating rate on food and energy intake across twenty-four ad libitum meals. British Journal of Nutritiondoi:10.1017/s0007114524001478好きなだけ食べてよい食事を24回にわたって観察し、食べる速さと摂取量の関係を調べた研究。ゆっくり食べた食事では、速く食べた食事に比べて食べた量が平均22%(84g)少なく、摂取エネルギーは13%(71kcal)少なかった。測っているのは1食ごとの摂取量であって、体重ではない。
  3. ヒト実験Chewing increases postprandial diet-induced thermogenesisdoi:10.1038/s41598-021-03109-x噛むことが食後のエネルギー消費(食事誘発性熱産生)に与える影響を測った研究。味わう時間と噛む時間のどちらもが食事誘発性熱産生を増やしたと報告している。ただし食事誘発性熱産生は1日の消費の約10%を占める項目で、そのうちの増加分は小さい。
  4. RCTSlower eating speed lowers energy intake in normal-weight but not overweight/obese subjects. Journal of the Academy of Nutrition and Dieteticsdoi:10.1016/j.jand.2013.11.002標準体重の35人と過体重・肥満の35人を対象に、同じ昼食をゆっくり食べる条件と速く食べる条件で比べたランダム化クロスオーバー試験。ゆっくり食べることで摂取エネルギーが有意に減ったのは標準体重の群だけで、過体重・肥満の群では差が出なかった。