朝食を抜くと太るのか
ランダム化試験をまとめると、朝食を抜いた群で体重が0.54kg減ったという報告と、差は見られなかったという報告がある。太る方向の結果は出ていない。観察研究の関連は、生活の他の違いで説明できる可能性が高い。
「朝食を抜くと太る」は、健康情報の定番です。
出どころをたどると、たいてい観察研究に行き着きます。朝食を抜く人に太っている人が多い、という関連です。
関連は実在します。問題は、そこから因果を読むかどうかです。
ランダムに割り付けた試験を見る
朝食を食べる群と抜く群を、ランダムに割り付けた試験があります。まとめた解析を2つ並べます。
| 解析 | 結果 |
|---|---|
| 10本の論文・12の比較(6日〜12週) | 体格の指標にはっきりした差はなかった |
| 別のメタ分析 | 抜いた群のほうが0.54kg少なかった |
どちらも「抜くと太る」にはなっていません。 一方は差なし、一方はむしろ抜いたほうが軽い。
抜いた群のほうが軽くなるのは、理由が分かりやすい。1食ぶん入らなければ、その日の合計は減ります。食事回数を変えた解析でも体重に差は出ていません。
なお後者の解析では、LDLコレステロールは上昇していたと報告されています。体重の話と健康の話は別々に見る必要があります。
では、観察研究の関連は何だったのか
朝食を抜く人と食べる人では、他の生活も違います。
| 朝食を抜く人に多いとされるもの |
|---|
| 就寝と起床が遅い |
| 夜に食べる量が多い |
| 喫煙・飲酒の習慣 |
| 運動の習慣がない |
観察研究では、これらを完全に切り分けられません。朝食が原因なのか、朝食を抜く生活が原因なのかが区別できない構造です。
睡眠が短い人に肥満が多いという関連も同じ形でした。関連は言えても、因果は言えません。
抜いてもいいが、増える経路はある
ランダム化試験で差が出ないなら、抜いても食べてもいい、が答えになります。
ただし、1つだけ確かめる場所があります。
| 朝食を抜いた日 | 何が起きているか |
|---|---|
| 昼と夜がいつも通り | 合計が減る。差は出る |
| 昼が大盛りになる | 合計は変わらない |
| 夜に間食が増える | 合計が増えることもある |
抜いた分がどこかで戻っていないか。ここだけ見れば足ります。
代わりに、朝の時間を別のことに使う
朝食を食べるかどうかで悩む労力は、他に回せます。
| 朝にできること | 1日の収支への効き |
|---|---|
| 朝食を食べる/抜くを悩む | 差は確認されていない |
| 10分歩く | 約 35 kcal(体重70kg) |
| 昼に何を食べるか決めておく | 数百kcal動くことがある |
10分でも出れば効きます。朝食の有無より、こちらのほうが数字になります。
食欲がないのに無理に食べる必要はありませんし、食べたい人が我慢する必要もありません。
では、どうするか
- 朝に食欲があるなら食べる。ないなら抜く。差は確認されていません
- 抜くなら、昼と夜が増えていないかだけ確かめる。1週間の記録で分かります
- 朝食を抜いて午前の集中が落ちるなら、食べたほうが総合的に得です
- 食べるなら、たんぱく質が入るものにする。昼までの空腹が変わります
- 朝の10分を歩く時間に使えるなら、そちらのほうが数字になります
まとめ
- ランダム化試験の解析で、差なしという報告と、抜いた群が0.54kg軽いという報告がある
- どちらも「抜くと太る」にはなっていない
- 観察研究の関連は、生活の他の違いで説明できる可能性が高い
- 抜いて増えるとすれば、昼と夜で戻っている場合
- 体重の話と、コレステロールなどの健康指標の話は分けて見る
朝食は、好きなほうで大丈夫です。
出典
この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。
- 系統的レビューEating versus skipping breakfast has no discernible effect on obesity-related anthropometric outcomes: a systematic review and meta-analysis. 2022doi:10.12688/f1000research.22424.3朝食を食べる群と抜く群をランダムに割り付けた試験を集めたメタ分析。10本の論文から12の比較を対象にしており、期間は6日から12週間。肥満に関わる体格の指標に、はっきりした差は見られなかった。期間が短い試験が多い点は割り引いて読む必要がある。
- 系統的レビューBreakfast Skipping, Body Composition, and Cardiometabolic Risk: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Trials. Obesity. 2020doi:10.1002/oby.22791ランダム化試験を集めたメタ分析。朝食を抜いた群のほうが体重が0.54kg少なかった。一方で、LDLコレステロールは上昇していたと報告されている。
- 系統的レビューThe effects of eating frequency on changes in body composition and cardiometabolic health in adults: a systematic review with meta-analysis of randomized trials. International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity. 2023doi:10.1186/s12966-023-01532-z食事の回数を変えたランダム化試験を集めたメタ分析。**主要アウトカムは体重の変化**で、高頻度と低頻度の差は−0.62kg(95%信頼区間 −2.76〜1.52)と有意ではなかった。ただし著者らは**エビデンスの確実性を「非常に低い」**と評価しており、16試験のうち15試験がバイアスリスク高とされている。