減量中の筋トレは、週に何セットからやる意味があるのか
筋肉の増え方は週のセット数に応じてなだらかに増える。1セット増えるごとに約0.37%で、「ここから下は無意味」という段差は見当たらない。いちばん大きい差はゼロと1回のあいだにある。
「週2回は必要」「1部位10セットは要る」。
数字はよく出てきますが、その下だと意味がないのかまでは語られません。減量中、時間が取れない週にどうするかに関わります。
セット数と筋肉の増え方の関係
週あたりの合計セット数と筋肉量の増加を調べたメタ分析があります。
セット数を連続した変数として扱った解析があります。1セット増えるごとに、増加量の割合が約0.37ポイント上がるという関係でした。
ここで大事なのは形のほうです。
| 想定されがちな形 | 実際の形 |
|---|---|
| 一定の量を超えると効き始める | 少しずつ、なだらかに増える |
| 下回ると意味がない | 下回っても、その分は効く |
段差がありません。 この解析では、セット数を「少ない・中くらい・多い」の3つに分けた比較のほうは有意になりませんでした。つまり**「週◯セットを超えたら別物」という線は、データからは引けていない**ということです。
より新しいメタ回帰では、増やすほど上がるが頭打ちになる形が示されています。平均的な量(週12セット前後)での1セットあたりの上乗せは、筋肥大で約0.24ポイント。筋力では約0.21ポイントでした。
いちばん大きい差は、ゼロと1回のあいだにある
なだらかな関係だとすると、どこの差がいちばん大きいか。ゼロと1回のあいだです。
| 週のセット数 | 目安 |
|---|---|
| 0 | 減量中に落ちる筋肉を、そのまま落とす |
| 3〜5 | 増加が確認されている範囲の下端 |
| 10〜 | メタ分析で最も大きかった範囲 |
減量中の筋トレの目的は、増やすことより落とさないことにあります。その意味では、週3セットでも0とはまるで違います。
減量中に筋トレをする理由は、消費ではない
もう1点、混ざりやすいところがあります。
「筋トレで代謝を上げる」という理由づけは、効果量で見ると弱い。骨格筋が1日に使うのは1kgあたり約13kcalなので、1kg増やしても1日十数kcalです。
筋トレの価値はそこではありません。減量中に落ちる除脂肪量を抑えることにあります。体重が同じだけ減っても、中身が違ってきます。
たんぱく質を足すと除脂肪量の増加が0.30kg上乗せされたメタ分析もあります。同じ解析で、1日あたり体重1kgにつき約1.6gを超えると上乗せは見られなくなりました。
代わりに、週1セットから始める
時間が取れない週に「今週はできなかった」で終わらせるより、下げた量でも続けるほうが効きます。
| その週の判断 | 結果 |
|---|---|
| 10セット取れないから、今週はやめる | 0 |
| スクワット3セットだけやる | その分は効く |
有酸素の20分ルールと同じ構造です。区切りを守れない日に全部を捨てるほうが、損が大きい。
では、どうするか
- 週の合計セット数で数える。1回あたりではなく、週で足していきます
- 時間がない週は、セット数を下げて続ける。段差はないので、下げた分だけ効きます
- 大きい種目を優先する。スクワットや腕立てなど、1種目で複数の部位が入るもの
- たんぱく質は体重1kgあたり1.6g程度まで。体重70kgで112gが目安になります
- 減量中は「増やす」より「落とさない」を目標にする。判断が楽になります
気をつけること
痛みが出る動作は続けないでください。フォームや負荷の個別の指導は、このブログの守備範囲を超えます。関節や腰に痛みがある場合は、医療機関や指導者にご相談ください。
まとめ
- セット数と筋肉の増え方はなだらかな関係で、下限に段差はない
- 1セット増えるごとに増加量の割合が約0.37ポイント。頭打ちはある
- セット数を3つの水準に分けた比較は有意でなく、「ここから上が本物」という線は引けていない
- いちばん大きい差はゼロと1回のあいだ
- 減量中の目的は増やすことより、落とさないこと
週1セットでも0とは違います。取れる量でかまいません。
出典
この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。
- 系統的レビューDose-response relationship between weekly resistance training volume and increases in muscle mass: A systematic review and meta-analysis. 2017doi:10.1080/02640414.2016.1210197週あたりの合計セット数と筋肉量の増加の関係を調べたメタ分析(15研究・34の治療群)。セット数を連続した変数として扱うと、1セット増えるごとに増加量の割合が約0.37ポイント上がるという関係が出た。**ただしセット数を3つの水準に分けた解析は有意でなく(P=0.074)、「週◯セット以上が最も良い」という群ごとの優劣までは言えない。**
- 系統的レビューThe Resistance Training Dose Response: Meta-Regressions Exploring the Effects of Weekly Volume and Frequency on Muscle Hypertrophy and Strength Gainsdoi:10.1007/s40279-025-02344-wより新しいメタ回帰。セット数を増やすほど筋肉量も筋力も増えるが、どちらも頭打ちになっていく。頭打ちは筋力のほうがはっきりしている。平均的な量(週12セット前後)での1セットあたりの上乗せは、**筋肥大で約0.24ポイント、筋力で約0.21ポイント**と見積もられている。著者らにはフィットネス業界での利益相反の記載がある。
- 系統的レビューA systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. British Journal of Sports Medicine. 2018doi:10.1136/bjsports-2017-09760849研究・1,863人のメタ分析。筋トレにたんぱく質の補給を足すと、除脂肪量の増加が0.30kg上乗せされた。1日あたり体重1kgにつき約1.6gを超えると、それ以上の上乗せは見られなかった。