糖質を摂ると必ず太るのか。揃えて比べた実験があります

結論

カロリーを揃えて測った実験では、糖質を減らした期間のほうが体脂肪の減りは小さかった。1年の試験では低脂質と低糖質で差が出ていない。糖質制限の最初の1〜2kgはグリコーゲンと水で、脂肪ではない。

「糖質を摂ると太る」。

この主張を確かめるには、比べ方を1つ決めないといけません。カロリーを揃えるかどうかです。

揃えずに比べれば、糖質を減らした人のほうが食べる量も減るので、当然そちらが痩せます。それは糖質の話ではなく量の話になります。

カロリーを揃えて、病棟で測った実験

肥満の成人19人を代謝病棟に入れ、食べるものを完全に管理した研究があります。

まず5日間、基準どおりの食事をとります。そのあと基準のカロリーから30%を削るのですが、削り方を2通り用意しました。糖質だけから削る6日間と、脂質だけから削る6日間です。総カロリーは同じです。

結果はこうでした。

削ったもの 体脂肪の減り
糖質 1日 53 g
脂質 1日 89 g

脂質を削ったほうが多く減っています。 糖質を削った期間は脂肪の燃焼こそ増えましたが、体脂肪の減り方では下回りました。

この数字が何を測ったものかを書いておきます。

正しい読み方 違う読み方
体脂肪の減った量(体重ではない) 体重の減り方
総カロリーを揃えた上での差 糖質制限は痩せない
6日間の測定値 1年続けてもこの差が出る

制限をかけた期間が6日間と短い点は割り引く必要があります。体が切り替わる途中を見ている可能性は残ります。

1年続けたら、どうだったか

もっと長い試験もあります。

過体重の成人609人を、健康的な低脂質食と健康的な低糖質食にランダムに割り付け、12か月追ったものです。カロリーの目標値は指定していません。

体重の変化に、有意な差はありませんでした。 どちらの食事でも血圧・インスリン・血糖は改善しています。

短期の病棟実験では脂質制限が有利、1年の試験では引き分け。どちらの結果も「糖質が特別に太る」は支持していません。

では、糖質を抜くと最初に落ちるあれは何か

糖質制限を始めて数日で1〜2kg落ちる、という経験はよく語られます。これは本当に起きます。

正体はグリコーゲンと水です。

筋肉と肝臓に蓄えられるグリコーゲンは、それ自体の数倍の重さの水を一緒に抱えています。 糖質を減らすとグリコーゲンが減り、水が出ていく。体重計は動きますが、減っているのは脂肪ではありません。

そして糖質を戻せば、同じだけ戻ります。

代わりに、続けられるほうを選ぶ

1年の試験で差が出ていないなら、選ぶ基準は「どちらが痩せるか」ではなくなります。

低糖質 低脂質
1年後の体重 差なし 差なし
向いている人 主食を減らすのが苦にならない 揚げ物や油を減らすほうが楽
つまずきやすい点 外食で選択肢が減る 満腹感が出にくいことがある

同じ結果になるなら、続けられるほうが勝ちます。 ここは好みで決めていい部分です。

どちらを選ぶにしても、効いているのは1日の収支のほうです。糖質を抜いてもカロリーが同じなら、体脂肪の減り方は変わりません。

なお、血糖値が上がること自体が太る原因かどうかも決着していません。糖質を悪者にする話は、この2本でだいたい足ります。

私が最初にやったダイエットが、これでした

10年前、いちばん最初に試したのが糖質制限です。

ゆで卵と豆腐とサラダチキンしか食べない生活を2か月続けて、65kgまで落としました。当時は「糖質を抜いたから落ちた」と思っていました。

いま同じ食事を眺めると、糖質を抜いたというより、単にカロリーが極端に少なかっただけです。ゆで卵と豆腐とサラダチキンで1日に何kcal入るかを数えれば、そうなります。

そして、あっという間にリバウンドしました。食事をどう管理するかを何も知らなかったからです。

落とし方は分かっていたのに、戻さない方法を知らなかった。当時の自分にいまの知識があれば、あの体重のまま続けられたと思っています。

糖質制限そのものが悪いという話ではありません。 効いていたのが何だったかを取り違えると、終わったあとに戻る場所が無くなる、という話です。

では、どうするか

  1. 糖質を「抜く」か「抜かない」かではなく、その食事の総カロリーで判断する
  2. 低糖質と低脂質は、続けられるほうを選ぶ。1年の試験で差は出ていません
  3. 始めて数日の1〜2kgは水分と考える。そこで喜ばず、戻っても落ち込まない
  4. 主食を減らすなら、減らした分をどう戻すかを先に決めておく。戻し方がないと元に戻ります
  5. 糖尿病の薬やインスリンを使っている方は、糖質量を大きく変える前に必ず主治医に相談してください

まとめ

  • カロリーを揃えた病棟の実験では、体脂肪の減りは糖質制限が1日53g、脂質制限が1日89g
  • 609人を1年追った試験では、低脂質と低糖質で体重の差は出なかった
  • 糖質制限の最初の1〜2kgはグリコーゲンと水。糖質を戻せば戻る
  • 差が出ないなら、選ぶ基準は「どちらが痩せるか」ではなく「どちらが続くか」
  • 効いているのは総カロリー。糖質そのものに特別な作用は確認されていない

好きなほうを選んでいい、というのがこの話の結論です。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. RCTCalorie for Calorie, Dietary Fat Restriction Results in More Body Fat Loss than Carbohydrate Restriction in People with Obesity. Cell Metabolism. 2015doi:10.1016/j.cmet.2015.07.021肥満の成人19人を代謝病棟に入れ、食事を完全に管理して2種類の食事を試した研究。5日間の基準食のあと、基準となるカロリーの30%を糖質だけから削る期間と脂質だけから削る期間を設けた。**制限をかけた期間はそれぞれ6日間**(入院1回がおよそ2週間)。体脂肪の減りは糖質を削った期間が1日53g、脂質を削った期間が1日89gで、後者が有意に大きかった。期間が短く、代謝が切り替わる途中を見ている可能性は残る。
  2. RCTEffect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion: The DIETFITS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018;319:667-679doi:10.1001/jama.2018.0245過体重の成人609人を、健康的な低脂質食と健康的な低糖質食にランダムに割り付け、12か月追った試験。体重の変化に有意な差はなかった。どちらの食事でも血圧・インスリン・血糖は改善している。カロリーの目標値は指定していない。
  3. ヒト実験Olsson KE, Saltin B. Variation in total body water with muscle glycogen changes in man. Acta Physiol Scand. 1970;80(1):11-18doi:10.1111/j.1748-1716.1970.tb04764.x19人を対象に、運動でグリコーゲンを枯渇させたあと糖質を多く摂らせた研究。全身の水分が2.2L、体重が2.4kg増えた。ここから**グリコーゲン1gあたり3〜4gの水**が伴うと見積もられている。過食の実験ではなく、枯渇と再充填の実験である点に注意。