ケトジェニックは、他の方法より脂肪が落ちるのか
カロリーとたんぱく質を揃えてケトン食に切り替えた研究では、消費の増加は一時的で小さく、脂肪の減り方は加速しなかった。1年の試験でも低糖質と低脂質に差はない。落ちる人は、食べる量が減っている。
ケトジェニックは、糖質を極端に減らして脂肪を主な燃料に切り替える食べ方です。
主張されるのは「脂肪を燃やすモードに入るので、同じカロリーでも脂肪が落ちやすい」。この「同じカロリーでも」を確かめた研究があります。
カロリーを揃えて、病棟で切り替えた研究
過体重・肥満の男性を代謝病棟に入れ、食事を完全に管理した研究があります。
高糖質の食事から、カロリーとたんぱく質を揃えたケトン食に切り替えました。違うのは糖質と脂質の比率だけです。
結果は2つありました。
| 測ったもの | 結果 |
|---|---|
| 消費エネルギー | 増えた。ただし2週間ほどで消える一時的なもので、大きさも小さい(測り方によっては逆向きに見える結果もある) |
| 体脂肪の減り方 | 加速しなかった |
「脂肪を燃やすモード」には実際に入っています。それでも体脂肪の減りは速くなりませんでした。
少人数を管理下で測った研究なので、そこは割り引いて読む必要があります。
1年の試験でも差は出ていない
期間の長い試験もあります。
過体重の成人609人を、健康的な低脂質食と健康的な低糖質食にランダムに割り付け、12か月追ったものです。カロリーの目標値は指定していません。
体重の変化に、有意な差はありませんでした。
短期の病棟実験でも、1年の試験でも、糖質を減らす形に上乗せは出ていません。
では、始めた人が落ちるのはなぜか
ケトジェニックで実際に落ちる人はいます。理由は2つに分かれます。
| 落ちた分 | 正体 |
|---|---|
| 最初の1〜2週間 | グリコーゲンと水 |
| それ以降 | 食べる量が減った分 |
グリコーゲンはそれ自体の数倍の重さの水を抱えています。 糖質が入らなくなると抜けるので、体重計は大きく動きます。糖質を戻せば戻ります。
そして2つめが本体です。食べられるものが減れば、合計も減ります。枠を作ると自然に食べる量が減るのと同じ構造です。
代わりに、続けられるかで選ぶ
差が出ないなら、選ぶ基準は1つになります。
| ケトジェニック | 普通の食事制限 | |
|---|---|---|
| 1年後の体重 | 差なし | 差なし |
| 外食のしやすさ | 選択肢が狭い | 調整しやすい |
| やめたあと | 水分が戻る | 戻る分が小さい |
| 向いている人 | 主食への執着が薄い | 量で調整するのが得意 |
やめたあとに戻る分があることだけ、先に知っておくと落ち着きます。糖質を戻した週に1〜2kg増えても、それは脂肪ではありません。
糖質そのものに太る作用は確認されていないので、糖質を避けること自体を目的にする必要はありません。
気をつけること
- 糖尿病の薬やインスリンを使っている方は、糖質量を大きく変える前に必ず主治医に相談してください
- 腎臓や肝臓に持病のある方、妊娠中の方も同様です
- 極端に食品の種類が減る食べ方なので、長期に続ける場合は栄養の偏りに注意がいります
まとめ
- カロリーとたんぱく質を揃えた病棟の研究で、消費の増加は一時的かつ小さかった
- 同じ研究で、体脂肪の減り方は加速しなかった
- 609人を1年追った試験でも、低糖質と低脂質に差はなかった
- 最初の1〜2週間で落ちるのはグリコーゲンと水
- それ以降に落ちるのは、食べられるものが減って合計が減るから
やりたければやっていい方法です。ただし、それを選ぶ理由は「速く落ちるから」ではありません。
出典
この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。
- ヒト実験Energy expenditure and body composition changes after an isocaloric ketogenic diet in overweight and obese men. American Journal of Clinical Nutrition. 2016doi:10.3945/ajcn.116.133561過体重・肥満の男性17人を代謝病棟に入れ、高糖質の食事から、カロリーとたんぱく質を揃えたケトン食に切り替えた研究。部屋ごと測る装置では消費エネルギーが増えたが、増加は2週間ほどで消える一時的なもので、大きさも小さかった。体脂肪の減り方が加速することはなかった。**ただし二重標識水法で測った各期間の終盤では1日+151±63kcalという逆向きに見える結果も出ており、測り方で像が変わる。**少人数の管理下の研究である点は割り引いて読む必要がある。
- RCTEffect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults: The DIETFITS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018;319:667-679doi:10.1001/jama.2018.0245過体重の成人609人を、健康的な低脂質食と健康的な低糖質食にランダムに割り付け12か月追った試験。体重の変化に有意な差はなかった。カロリーの目標値は指定していない。
- ヒト実験Olsson KE, Saltin B. Variation in total body water with muscle glycogen changes in man. Acta Physiol Scand. 1970;80(1):11-18doi:10.1111/j.1748-1716.1970.tb04764.x19人を対象に、運動でグリコーゲンを枯渇させたあと糖質を多く摂らせた研究。全身の水分が2.2L、体重が2.4kg増えた。ここから**グリコーゲン1gあたり3〜4gの水**が伴うと見積もられている。過食の実験ではなく、枯渇と再充填の実験である点に注意。