40代から痩せにくくなるのは本当か

結論

除脂肪量を揃えた1日の消費エネルギーは20〜60歳でほぼ横ばい。下がるのは20歳までと60歳以降。40代で痩せにくいと感じるなら、原因は年齢そのものより筋肉量と活動量の変化にある。

「40を過ぎたら代謝が落ちるから、若いころと同じようにはいかない」。

よく聞く説明です。測った結果は、これと合いません。

6,421人を測った研究

生後8日から95歳までの6,421人を、29か国で二重標識水法により測定した研究があります。エネルギー消費の測定としては最も精度の高い方法です。

除脂肪量を揃えて比べると、こうなりました。

年齢 1日の消費エネルギー
〜20歳ごろ 大人より高く、20歳に向けて下がる
20〜60歳 ほぼ横ばい
60歳〜 下がる

30代でも40代でも50代でも、横ばいです。 下がるタイミングは、思われているより20年ほど後ろにあります。

読み方を間違えやすいところ

この結果には条件が付いています。

正しい読み方 違う読み方
除脂肪量を揃えれば横ばい 体格が変わっても消費は同じ
筋肉が減れば、実際の消費は下がる 年齢では下がらないので何もしなくていい
同じ人を追跡したわけではない 一人ひとりの一生を測った

ここを落とすと嘘になります。筋肉が減れば、実際の基礎代謝は下がります。

つまり40代で消費が落ちているとすれば、原因は年齢そのものではなく、その年齢までに減った筋肉のほうです。

では、40代で痩せにくい感じは何なのか

実感が間違っているわけではありません。心当たりは、だいたいこの3つに収まります。

変わったもの 効き方
筋肉量が減った 基礎代謝が下がる。ただし1kgで1日十数kcal
日常の活動量が減った ここがいちばん大きい
食べる量が変わっていない 消費だけ減れば、収支はプラスに振れる

過食させた実験では、脂肪の増え方の差を説明していたのは無意識の活動量(NEAT)でした。通勤の形が変わる、階段を使わなくなる、休日に出かけなくなる。足すと数百kcalになります。

年齢とともに変わるのは代謝ではなく、たいてい生活のほうです。

代わりに、変わった項目を書き出す

「年齢のせい」で止めると打つ手がなくなります。分解すると、動かせる項目が出てきます。

項目 20代のころ いま
1日の歩数
階段を使う回数
週の運動時間
食べる量

埋めてみると、変わっているのはたいてい真ん中の2つです。

歩数を1日3,000歩増やすと、体重70kgでおよそ110kcal(歩数から逆算した見積もりです)。筋肉1kgを1年かけて増やして1日十数kcalなのと比べると、こちらのほうがすぐ効きます。

では、どうするか

  1. 「年齢のせい」の前に、20代のころと比べて何が変わったかを書き出す
  2. 歩数を測る。日常の活動量で、いちばん手軽に数字になる部分です
  3. 筋トレを入れる。減った筋肉を戻すほうが、代謝を嘆くより早い
  4. たんぱく質は体重1kgあたり1.6g程度まで。年齢が上がるほど意識する価値があります
  5. 60歳を過ぎてからは実際に下がるので、そこは前提として計算に入れる

まとめ

  • 6,421人を測った研究で、除脂肪量を揃えた消費は20〜60歳でほぼ横ばい
  • 下がるのは20歳までと60歳以降
  • ただし筋肉が減れば実際の消費は下がる。「揃えれば」が条件
  • 40代で痩せにくい原因は、年齢より筋肉量と活動量の変化
  • 歩数を3,000歩増やすと1日約110kcal。筋肉1kgより効きが早い

年齢は理由になりません。変わったのは、たいてい生活のほうです。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 観察研究Daily energy expenditure through the human life course. Science. 2021doi:10.1126/science.abe5017生後8日から95歳までの6,421人を、29か国で二重標識水法により測定した研究。除脂肪量を揃えて比べると、1日の消費エネルギーは20〜60歳のあいだほぼ横ばいで、下がるのは60歳以降だった。20歳までは体重あたりの消費が大人より高い。各時点の横断的な測定で、同じ人を追跡したものではない。
  2. ヒト実験Role of Nonexercise Activity Thermogenesis in Resistance to Fat Gain in Humans. Science. 1999;283(5399):212-214doi:10.1126/science.283.5399.212成人16人に1日1,000kcal多く食べさせ8週間続けた研究。脂肪の増え方に10倍の差が出て、差を説明していたのは無意識の活動量(NEAT)だった。
  3. 系統的レビューA systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. British Journal of Sports Medicine. 2018doi:10.1136/bjsports-2017-09760849研究・1,863人のメタ分析。筋トレにたんぱく質を足すと除脂肪量の増加が0.30kg上乗せされた。加齢で失われる筋肉を戻す速さの目安になる。