ケトン体はオカルトなのか。言葉を分けると答えが出ます
ケトン体は実在する代謝産物で、糖質を強く減らせば増える。オカルトなのは「ケトン体が出ている=脂肪が余分に燃えている」という接続のほう。揃えて測ると、脂肪の減り方は加速しない。
ケトン体をめぐる話は、賛否が極端に割れます。
言葉を2つに分けると、どちらも正しいことが分かります。
| 何の話か | 答え |
|---|---|
| ケトン体という物質は存在するのか | する。実在する代謝産物 |
| ケトン体が出ている=脂肪が余分に燃えている、か | ここが成立しない |
ケトン体そのものは実在する
糖質が足りなくなると、体は脂肪酸を分解してケトン体を作ります。脳は脂肪酸をそのまま使えないので、代わりの燃料として使われます。
飢餓でも、糖質を強く制限した食事でも、実際に増えます。ここまでは教科書の話で、疑う余地はありません。
尿の試験紙で測れるのも本当です。
成立しないのは、次の一歩
問題はここからです。
「ケトン体が出ている」を「脂肪が余分に燃えている」と読み替える接続が、測ると成立しません。
過体重・肥満の男性を代謝病棟に入れ、カロリーとたんぱく質を揃えたままケトン食に切り替えた研究があります。
| 起きたこと | 結果 |
|---|---|
| ケトン体が出る状態 | 入った |
| 消費エネルギー | 増えたが一時的で、大きさも小さい |
| 体脂肪の減り方 | 加速しなかった |
ケトン体は出ている。それでも脂肪の減りは変わりませんでした。
なぜそうなるのか
ケトン体は燃料の種類が変わった印であって、燃えた総量の印ではないからです。
| ケトン体が示すもの | 示さないもの |
|---|---|
| いま脂肪を燃料に使っている | どれだけ燃やしたか |
| 糖質が足りていない状態 | 体脂肪が減っているかどうか |
食べた脂質を燃やしても、ケトン体は出ます。体脂肪を削っているとは限りません。
体脂肪が減るかどうかを決めているのは、1日の収支のほうです。燃料の内訳ではありません。
尿の試験紙をどう見るか
ケトン体の量が多いほど痩せている、という読み方もできません。
試験紙が示すのは「尿に出てきた量」で、体内で使われた量ではありません。慣れてくると体が効率よく使うようになり、尿に出る量はむしろ減ります。
数値が下がったから失敗した、という話にはなりません。
代わりに、確かめる場所を変える
ケトン体を測る目的が「うまくいっているか知りたい」なら、見る場所は別にあります。
| 見るもの | 分かること |
|---|---|
| 尿のケトン体 | 糖質が足りていない状態かどうか |
| 7日平均の体重 | 脂肪が減っているかどうか |
| ベルトの穴 | 腹囲の変化 |
体脂肪の話が知りたいなら、下2つのほうが直接的です。体重は1日で2kg近く動くので、平均で見ます。
では、どうするか
- ケトン体が出ているかどうかで、うまくいっている判断をしない
- 進み具合は7日平均の体重とベルトで見る。こちらが直接の答えです
- 試験紙の数値が下がっても、失敗と考えない。体が使えるようになった可能性があります
- ケトン食を選ぶなら、理由は続けやすさで決める
- 糖尿病の薬を使っている方は、必ず主治医に相談してください
まとめ
- ケトン体は実在する代謝産物。糖質を強く減らせば実際に増える
- オカルトなのは「出ている=脂肪が余分に燃えている」という接続のほう
- カロリーを揃えた研究では、ケトン体が出ていても脂肪の減りは加速しなかった
- ケトン体は燃料の種類の印であって、燃えた総量の印ではない
- 進み具合は7日平均の体重とベルトで見るほうが直接的
物質を否定する必要はありません。否定するのは、そこから飛んだ結論のほうです。
出典
この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。
- ヒト実験Energy expenditure and body composition changes after an isocaloric ketogenic diet in overweight and obese men. American Journal of Clinical Nutrition. 2016doi:10.3945/ajcn.116.133561過体重・肥満の男性17人を代謝病棟に入れ、カロリーとたんぱく質を揃えたままケトン食に切り替えた研究。ケトン体が出る状態には実際に入ったが、部屋ごと測る装置での消費エネルギーの増加は一時的で小さく、体脂肪の減り方は加速しなかった。二重標識水法で測った各期間の終盤では1日+151±63kcalという逆向きに見える結果も出ている。少人数の管理下の研究。
- RCTEffect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults: The DIETFITS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018;319:667-679doi:10.1001/jama.2018.0245過体重の成人609人を低脂質食と低糖質食に割り付け12か月追った試験。体重の変化に有意な差はなかった。