体重が増えたのは「筋肉が増えたから」なのか

結論

筋肉は速く増えない。たんぱく質を足しても除脂肪量の上乗せは0.30kgというメタ分析がある。数日から数週で増えた体重の正体はグリコーゲンと水で、判断の材料は体重計ではなく服とベルトのほうにある。

「体重は増えたけど、筋肉がついたからだと思う」。

減量中に体重が増えたとき、いちばん救われる説明です。そして本当であることもあります。

ただ、増えた量によっては成立しません。何kgまでなら成立するのかを見ていきます。

筋肉が増える速さには、上限がある

筋トレとたんぱく質の効果を調べた研究を集めたメタ分析があります。49研究・1,863人ぶんです。

筋トレにたんぱく質の補給を足すと、除脂肪量の増加が0.30kg上乗せされました。個々の試験は、おおむね数週間から数か月の期間です。

たんぱく質を足して得られる上乗せが、数か月で0.3kg。筋肉は、そこまで速く増えません。

数字の読み方を書いておきます。

正しい読み方 違う読み方
たんぱく質を足したことによる上乗せが0.30kg 筋トレで増える筋肉が0.30kg
除脂肪量(筋肉・水分・骨などの合計) 筋肉だけの量
数週間〜数か月の試験をまとめた値 1か月あたりの値

ついでにもう1つ。同じ解析には、たんぱく質の量についての結果もあります。1日あたり体重1kgにつき約1.6gを超えると、それ以上増やしても上乗せは見られませんでした。 体重70kgなら112gです。

では、増えた2kgは何だったのか

筋トレを始めて1〜2週間で体重が1〜2kg増える。これはよく起きます。そして、たいてい筋肉ではありません。

候補は順番に見ていけます。

増えた分の正体 目安
日々のばらつき 体重の約0.53%(70kgで約0.4kg)
食事と水分が体内にある重さ 食べた物の重さそのまま
グリコーゲンと、それが抱える水 1〜2kg動きうる
塩分による水分貯留 数百g〜1kg
筋肉 数か月かけて、ゆっくり

グリコーゲンは筋肉と肝臓に蓄えられる糖で、それ自体の数倍の重さの水を一緒に抱えています。

筋トレを始めると、筋肉はグリコーゲンを多めに蓄えるようになります。水も一緒に増える。だから体重計は増える方向に動きます。

これは失敗ではなく、むしろ始まった証拠のほうです。

逆に、筋肉のせいにできる場面もある

「筋肉が増えたから」が成立する条件も書いておきます。

  • 期間が数か月あること
  • 増えた量が数kg以内であること
  • 筋トレを継続していること
  • 服のサイズやベルトの穴が、きつくなっていないこと

このすべてが揃っていれば、体重が横ばいか微増でも、中身が入れ替わっている可能性は十分あります。

逆に、1週間で2kg増えた場合は筋肉では説明できません。そこはグリコーゲンと水か、単純に食べた量です。

止まっている時期を、どう受け取るか

減量を続けているいまも、体重が動かない時期はあります。

以前の私なら、ここで「停滞期に入った、もうダメだ」と感じていました。いまは違う受け取り方ができます。筋肉が水を抱えているぶん、減った脂肪が見えていないだけかもしれない。

ただ、ここで止めずにもう一歩進めたいところです。「水分だから大丈夫」で片付けると、本当に減っていない場合を見逃します。

確かめること 水分で隠れている場合 本当に減っていない場合
7日の平均 数週間で下がりはじめる 下がらない
ベルトの穴 緩んでいる 変わらない
食べた量の記録 変わっていない たいてい増えている

区別がつくと、待つべきときと、見直すべきときが分かります。停滞期は体の防御機能ではないので、止まったまま何も変わらないなら、原因は別のところにあります。

代わりに、体重計の外を見る

体重が中身を教えてくれないなら、教えてくれるものを別に持てばいいという話になります。

見るもの 分かること かかる手間
体重(1日ごと) ほぼ水分の増減 毎日30秒
体重(7日の平均) 脂肪の増減の傾向 同上
ベルトの穴・服のきつさ 腹囲の変化 ゼロ
同じ条件で撮った写真 見た目の変化 月1回
挙上重量や回数 筋力の変化 記録するだけ

ベルトの穴はタダで、しかも脂肪の変化をよく反映します。 体重が増えていてベルトが緩んでいるなら、中身は入れ替わっています。

体組成計の体脂肪率は水分量で動くので、この判断には向きません。同じ日に測っても、朝と夜で数値が変わります。

では、どうするか

  1. 1日の体重ではなく、7日の平均を見る。1日では2kg近く動きます
  2. 筋トレを始めた直後の増加は、そのまま続ける。グリコーゲンと水で、数週間で落ち着きます
  3. ベルトの穴を判断材料に加える。体重が増えてベルトが緩んだら、中身が入れ替わっています
  4. たんぱく質は体重1kgあたり1.6g程度まで。それ以上は上乗せが見られませんでした
  5. 数か月かけて体重が横ばいなら、それは停滞ではなく入れ替わりかもしれません

まとめ

  • 49研究・1,863人のメタ分析で、たんぱく質を足した上乗せは除脂肪量0.30kg
  • 筋肉は数か月かけてゆっくり増える。1週間で2kgは説明できない
  • 筋トレ開始直後の増加は、グリコーゲンとそれが抱える水
  • 「筋肉が増えたから」が成立するのは、数か月かけて数kg以内の場合
  • 中身を知りたいなら、体重計よりベルトの穴と写真のほうが当てになる

体重が増えた日にやることは、原因を当てることではなく、判断の材料を増やすことです。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 系統的レビューA systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. British Journal of Sports Medicine. 2018doi:10.1136/bjsports-2017-09760849研究・1,863人を集めたメタ分析。筋トレにたんぱく質の補給を足すと、除脂肪量の増加が0.30kg上乗せされた。1日あたり体重1kgにつき約1.6gを超えると、それ以上増やしても上乗せは見られなかった。個々の試験はおおむね数週間から数か月の期間。
  2. ヒト実験Olsson KE, Saltin B. Variation in total body water with muscle glycogen changes in man. Acta Physiol Scand. 1970;80(1):11-18doi:10.1111/j.1748-1716.1970.tb04764.x筋肉に蓄えられるグリコーゲンと、体内の水分量の関係を測った古典的な研究。グリコーゲンが増減すると、その数倍の重さの水が一緒に動く。筋トレを始めた直後に体重が増えるのはこの経路で説明できる。
  3. 観察研究Day-to-day variability in euvolemic body mass. Renal Failure. 2023doi:10.1080/0886022X.2023.2273421健康な男性1名が9,521日にわたって同じ条件で記録した体重の解析。**n=1の記録である点に注意。**連続する日の相対差は平均ゼロで、標準偏差は1日間隔で0.53%、7日間隔で0.69%。目安として0.6%としている。万人に当てはまるわけではないが、条件を揃えても体重がこれだけ動く、という目安になる。元の主題は透析患者のドライウェイト設定で、体水分そのものは測っていない。