体重は1日でどれくらい動くのか。実測された数字を置きます

結論

体重の日々のブレは、条件を揃えて測っても標準偏差で体重の0.5〜0.7%ある。70kgなら±0.4kg前後。食事量・塩分・グリコーゲンが乗れば1〜2kg動く。体脂肪1kgは7,200kcalなので、1日で1kg増えたなら、それは脂肪ではない。

朝、体重計に乗ったら昨日より1.2kg増えていた。心当たりはない。

このとき起きていることを、数字で分解します。

まず、基準の数字を置く

体脂肪1kgは約7,200kcalです。この数字の出どころと使い方はエネルギー収支の記事に書きました。

つまり1日で体脂肪が1kg増えるには、その日だけで7,200kcalを余分に食べる必要があります。1日の消費が2,000kcalの人なら、合計9,200kcal。ラーメン10杯を超える量です。

ほとんどの場合、昨日そんなことはしていません。だとすると、増えた1.2kgは脂肪ではない。ここまでは計算だけで言えます。

では何が増えたのか。

条件を揃えても、これだけ動く

健康な男性1名が9,521日にわたり、同じ条件で体重を記録したデータの解析があります。

結果は、平均の差はゼロ。ただし**標準偏差は体重の約0.53%**でした。観察の間隔を7日に広げると0.69%まで増えています。

過去の研究でも、健康な成人の日々の変動係数は0.66〜0.71%と報告されています。

体重70kgに当てはめると、こうなります。

体重 標準偏差(0.53%) だいたいの振れ幅(±2SD)
60kg 0.32kg ±0.6kg
70kg 0.37kg ±0.7kg
80kg 0.42kg ±0.8kg
90kg 0.48kg ±1.0kg

これは条件を揃えて測ったときの数字です。実生活ではここに、その日食べたものが乗ります。

乗ってくるもの、3つ

1. グリコーゲンと、それに付いてくる水

体は糖質をグリコーゲンの形で蓄えます。このとき、グリコーゲン1gあたり3〜4gの水を一緒に抱え込みます。

筋肉と肝臓に貯められるグリコーゲンは、合わせて400〜500g程度。水を含めると1.5〜2kgぶんになります。

だから、糖質を減らした直後に体重がすとんと落ちるし、久しぶりに炭水化物を食べた翌日に戻る。どちらも脂肪の増減ではありません。

2. 塩分

塩分を多く摂ると、体は水分を保持します。外食の一食で2,500mgのナトリウムを摂れば、翌朝0.5〜1kgぶん増えていても不思議ではない。

これも数日で戻ります。

3. 消化管の中身

食べたものは、すぐには消えません。胃と腸の中にある内容物は、そのまま体重として測られます。

食物繊維の多い食事をした翌日に増えているのは、多くの場合これです。

昨日より増えた日に、何を見るか

1日の数字は、ほぼ読めません。読むなら7日移動平均です。

やり方は単純で、毎朝同じ条件(起床後・トイレのあと・服を脱いで)で測って記録し、直近7日の平均を見る。今日の平均と、1週間前の平均を比べる。

1週間の赤字が3,500kcalなら、脂肪はおよそ0.5kg減ります。停滞期に見えるものの多くは、この水準の変化が日々のブレに隠れているだけです。7日平均なら、この0.5kgは日々のブレ(±0.7kg)に埋もれずに見えてきます。

1日のブレより、1週間の差のほうが大きい。 だから週単位なら読める。

毎日測るのは、しんどくないか

スマート体重計の利用者1万人規模を追った研究では、測る頻度が高い人ほど体重が減りやすいという関連が出ています。

観察研究なので「毎日測れば痩せる」とは言えません。測る人がもともと熱心なだけかもしれない。

ただ、「毎日乗ると数字に振り回される」の反対の結果が出ている、という事実は知っておいていいと思います。

毎日測って、見るのは週平均だけ。1日の数字に反応しなくなるのは、増える理由を数えられるようになってからです。

代わりに、増えた日を記録の材料にする

増えた朝にやりがちなことと、代わりに置くものを並べます。

その朝にやること 得られるもの
原因を思い出そうとする ほぼ何も分からない。要因が3つ同時に動いている
その日を絶食や過度な制限で埋める 翌日の反動。水分はどのみち数日で戻る
前日に何を食べたかだけ書き足す 数週間ぶん溜まると、自分のパターンが見える

3つめだけが、次に使える形で残ります。

塩分の多い外食の翌日なのか、久しぶりに炭水化物を食べた翌日なのか。2〜3回同じ組み合わせを見れば、増えても動じなくなります。 知識ではなく自分のデータとして分かるので。

かかる時間は10秒です。思い出そうとする時間より短い。

では、どうするか

  1. 増えた朝は、原因を探さずに前日の食事を1行書く。判断は週平均でする
  2. 毎朝同じ条件で測る。起床後・トイレのあと・服を脱いで
  3. 今日の7日平均と、1週間前の7日平均を比べる。ここでだけ判定する
  4. 増えた日に食事を削らない。翌日も同じ量でいい
  5. 外食や生理周期の前後は、増えて当たり前として最初から見込んでおく

まとめ

  • 体脂肪1kgは7,200kcal。1日で1kg増えたなら、それは脂肪ではない
  • 条件を揃えて測っても、日々のブレは標準偏差で体重の0.5〜0.7%ある
  • グリコーゲンは1gあたり3〜4gの水を連れてくる。満タンと空で1.5〜2kgの差
  • 塩分と消化管の中身も、そのまま体重に乗る。どれも数日で戻る
  • 1日の数字は読めない。7日移動平均を見る

体重計が増えた日は、原因を探すより、明日も同じ条件で乗るほうが早いです。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 観察研究Day-to-day variability in euvolemic body mass. Renal Failure. 2023doi:10.1080/0886022X.2023.2273421健康な男性1名が9,521日にわたって同じ条件で記録した体重の解析。**n=1の記録である点に注意。**連続する日の相対差は平均ゼロで、標準偏差は1日間隔で0.53%、7日間隔で0.69%。目安として0.6%としている。万人に当てはまるわけではないが、条件を揃えても体重がこれだけ動く、という目安になる。元の主題は透析患者のドライウェイト設定で、体水分そのものは測っていない。
  2. 観察研究Frequency of Self-Weighing and Weight Change: Cohort Study With 10,000 Smart Scale Users. J Med Internet Res. 2021doi:10.2196/25529スマート体重計の利用者1万人規模のコホート研究。毎日測る人ほど体重が減りやすいという関連を報告している。観察研究なので因果は言えないが、「毎日乗ると気が滅入る」の反対の結果が出ている点は知っておいてよい。
  3. 総説Non-exercise activity thermogenesis (NEAT): a component of total daily energy expenditure. Journal of Exercise Nutrition & Biochemistry. 2018;22(2):23-30doi:10.20463/jenb.2018.0013消費エネルギーの構成要素についての総説。日々の体重変動そのものではないが、摂取と消費が釣り合っていても体重計の数字は動くという前提を確認するために参照した。