チートデイで代謝はリセットされない。でも、食べていい日はある
過食で増える消費エネルギーは1日あたり7%程度。「代謝のリセット」は起きない。だからチートデイは義務ではないし、同時に、外食した日に絶望する必要もない。翌日2kg増えても、脂肪は多くて0.3kgしか増えていない。
停滞期の相談をすると、かなりの確率でこう返ってきます。
体が飢餓モードに入っているので、チートデイで一度たくさん食べて代謝をリセットしましょう。
この説明を信じると、何が起きるか。**「痩せるために、今日はたくさん食べなければならない」**という奇妙な義務が発生します。そして週に一度、2,000kcalや3,000kcalの過食をして、翌朝2kg増えた体重計を見て絶望する。
この記事で言いたいことは2つです。
- その義務は存在しません。 代謝のリセットは起きないので、やらなくていい
- 同時に、外食した日に絶望する必要もありません。 翌朝の+2kgは、ほぼ脂肪ではない
義務が1つ減って、心配も1つ減る。それがこの記事の目的です。
「リセット」が主張していること
チートデイの理屈はこうです。摂取カロリーが減るとレプチンというホルモンが下がり、体が省エネモードに入る。だから一時的にたくさん食べてレプチンを戻せば、代謝が回復する——。
前半は正しいです。減量するとレプチンは実際に下がります。 問題は後半、「戻せば代謝が回復する」がどれくらいの大きさなのかです。
実測すると、24時間で7%
健康な女性10名に3日間の炭水化物過食を行わせ、間接熱量測定で消費エネルギーを測った研究があります。結果はこうでした。
| 測ったもの | 変化 |
|---|---|
| 血中レプチン | +28% |
| 24時間の総消費エネルギー | +7% |
| 基礎代謝 | 変化なし |
| 身体活動によるエネルギー消費 | 変化なし |
レプチンは確かに戻ります。28%も上がっています。
しかし、肝心の消費エネルギーは7%しか増えていません。しかも基礎代謝は動いていない。増えたぶんは主に、食べた物を処理するためのコスト(食事誘発性熱産生)です。
維持カロリーが1日2,400kcalの人なら、7%は約170kcal。おにぎり1個分です。
では、入ってくる量は
ここで足し算をします。1日500kcalの赤字で進めている人が、週に1回チートデイを入れた場合。
| kcal | |
|---|---|
| 平日6日間の赤字(−500×6) | −3,000 |
| チートデイの黒字(維持+2,000) | +2,000 |
| 過食による消費増(+7%) | −170 |
| 週の合計 | −1,170 |
チートデイなしで7日間通した場合の赤字は−3,500kcalです。 1日で、週の赤字の3分の2が消えました。
そして「代謝が上がったぶん」の170kcalは、+2,000kcalのうち8%しか相殺していません。
これが「リセットされない」の中身です。代謝は少し上がります。ただし、上がった量が小さすぎて、入ってきた量に対して勝負になっていない。
翌朝の+2kgについて(ここが本題)
そして、ここからが本当に無駄な気苦労の話です。
チートデイの翌朝、体重計に乗ると2kg増えている。多くの人がここで「1日で2kg太った」と受け取り、次の日に絶食したり、自己嫌悪で減量そのものをやめたりします。
計算してみます。+2,000kcalの黒字が全部体脂肪になったとしても、増える脂肪は約0.28kgです(体脂肪1kg=約7,200kcal)。実際には食べた物の処理コストがかかるので、これより少なくなります。
では、残りの1.7kgは何か。
- グリコーゲンと結合水:炭水化物をたくさん食べれば、グリコーゲンが補充されます。グリコーゲン1gには約3gの水が付く。ここだけで1〜2kg
- 塩分による水分貯留:外食は塩分が多い。ナトリウムが増えれば水を抱えます
- 消化管の中身:食べた物そのものの重さ。まだ体の「中」を通過中です
実測もあります。4日間の高炭水化物摂取で体重が2.4kg増え、そのうち2.2Lが体水分だったという研究があります。脂肪はほぼ増えていません。
つまり翌朝の+2kgは、その8割以上が水と食べ物そのものです。数日で元に戻ります。
「1日で2kg太った」は起きていません。起きたのは「0.3kg脂肪が増えて、1.7kgの水と食べ物を持っている」です。 この2つは、取るべき対応がまったく違います。
詳しくは停滞期の記事にも書きましたが、体重計の数字は脂肪の量ではありません。
「リフィード」は別の話。ただし、控えめに
ここで誠実に書いておきます。計画的な「リフィード」には、チートデイとは別に検討する価値があります。
筋トレをしている男女27名を、週2日の炭水化物リフィードを挟む群と連続制限群にランダム割付した7週間の試験があります。元の論文は、リフィード群のほうが除脂肪量と安静時代謝量が保たれた、と報告しました。
ただし、この研究には2つの重要な但し書きがあります。
1つ目。リフィード群も、週全体では27%の赤字を維持していました。 炭水化物を増やす日はあっても、週単位では赤字のままです。これは「好きなだけ食べる日」ではありません。
2つ目。この結論には、後に再解析による反論が出ています。 除脂肪量と安静時代謝量には群間差がなく、差があったのは「乾燥除脂肪量」という指標だけだった、という指摘です。つまりリフィードの効果は、元論文が述べたより弱いという読み方になります。
整理すると、こうです。
| リフィード | チートデイ | |
|---|---|---|
| 内容 | 計画された炭水化物の増量 | 無制限の過食 |
| 週の収支 | 赤字を維持 | 赤字が消える |
| 根拠 | RCTがあるが、再解析で反論あり | 「代謝リセット」の根拠はない |
この2つを同じ言葉で語るのが、混乱の原因です。
なお、リフィードが効くとしてもその機構は「代謝のリセット」ではありません。 エネルギー収支の観点では、週の赤字が同じなら結果も近くなるはずで、 差が出るとすれば除脂肪量の保持やトレーニングの質を通じた間接的な経路です。
では、どうするか
やることは3つだけです。
-
「代謝のために食べる日」をカレンダーから消す。 義務としてのチートデイは要りません。これで管理する項目が1つ減ります。
-
外食や飲み会は、週単位で吸収する。 金曜に食べると分かっているなら、月〜木を少しだけ深くする。あるいはその週の目標を緩める。 1日単位で完璧を目指すから、外れた日に全部が崩れます。
-
翌日は絶食しない。いつも通りに戻すだけ。 絶食すると空腹が跳ね返って、翌々日にまた食べすぎます。 体重は7日移動平均で見れば、数日で元の線に戻ります。
まとめ
- 過食で増える消費エネルギーは24時間で7%。維持2,400kcalの人で約170kcal
- 基礎代謝は動かない。「代謝のリセット」は起きない
- +2,000kcalのチートデイは、週の赤字の3分の2を消す
- 翌朝の+2kgのうち、脂肪は多くて0.3kg。残りは水と食べ物そのもの
- 「リフィード」は計画された炭水化物の増量で、週単位では赤字を維持している。無制限の過食とは別物
食べたい日に食べるのは、構いません。それは減量の失敗ではなく、週の予算の使い方の話です。
ただ、「代謝のために食べなければならない」という義務だけは、返上していい。 存在しない義務のために食べて、存在しない脂肪の増加に絶望するのは、あまりにも割に合いません。
出典
この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。
- ヒト実験Dirlewanger M, di Vetta V, Guenat E, Battilana P, Seematter G, Schneiter P, Jéquier E, Tappy L. Effects of short-term carbohydrate or fat overfeeding on energy expenditure and plasma leptin concentrations in healthy female subjects. Int J Obes. 2000;24:1413-1418doi:10.1038/sj.ijo.0801395健康な女性10名に3日間の炭水化物過食を行わせ、間接熱量測定で消費エネルギーを測った研究。レプチンは28%増加したが、24時間の消費エネルギー増加は7%にとどまり、基礎代謝と身体活動によるエネルギー消費は変化しなかった。n=10の小規模研究であり、痩せた女性のみが対象。
- RCTCampbell BI, et al. Intermittent Energy Restriction Attenuates the Loss of Fat Free Mass in Resistance Trained Individuals. A Randomized Controlled Trial. J Funct Morphol Kinesiol. 2020;5(1):19doi:10.3390/jfmk5010019筋トレをしている男女27名を、週2日の炭水化物リフィードを挟む群と連続制限群にランダム割付した7週間のRCT。リフィード群も週全体では27%の赤字を維持していた点が重要。なお本研究の結論には後述の再解析による反論がある。
- 資料Contrary to the Conclusions Stated in the Paper, Only Dry Fat-Free Mass Was Different between Groups upon Reanalysis. Comment on: "Intermittent Energy Restriction Attenuates the Loss of Fat-Free Mass in Resistance Trained Individuals. A Randomized Controlled Trial". J Funct Morphol Kinesiol. 2020doi:10.3390/jfmk5040085上記RCTへの再解析にもとづく反論コメント。除脂肪量と安静時代謝量には群間差がなく、差があったのは「乾燥除脂肪量」のみだったと指摘している。リフィードの効果は元論文が述べたより弱いという読み方になる。
- ヒト実験Olsson KE, et al. Variation in total body water with muscle glycogen changes in man. Acta Physiol Scand. 1970;80(1):11-18doi:10.1111/j.1748-1716.1970.tb04764.xグリコーゲン1gあたり約3gの水が付随することを示した古典的研究。過食の翌日に体重が跳ね上がる理由の中心。
- ヒト実験Segmental extracellular and intracellular water distribution and muscle glycogen after 72-h carbohydrate loading using spectroscopic techniques. J Appl Physiol. 2016doi:10.1152/japplphysiol.00126.20164日間の高炭水化物摂取で体重が2.4kg増加し、そのうち2.2Lが体水分の増加だった。脂肪の増減と無関係に体重が数kg動く実例。