ダイエット中の酒は、飲んだ量より「そのあとの一品」で決まります

結論

系統的レビューでは適量の飲酒と体重増加の関連は確認されていない。ビール1本200kcalは、いつもの食事に足しても収支に収まる範囲。超えるのは飲んだあとに追加のつまみを足したときで、22件の試験をまとめると平均82kcal。これは吸収率ではなく食べた量が増えたぶん。分かれ目は飲んだかどうかではなく、追加を足したかどうか。

「ダイエット中は酒を抜け」と言われます。

研究を並べると、抜くべきかどうかより先に、何が効いているのかがはっきりします。

適量では、体重との関連が確認されていない

飲酒と体重の関係を扱った研究を集めた系統的レビューがあります。

結論は、飲酒量と体重増加の正の関連を一貫して確認できたわけではない、というもの。関連が報告されているのは主に飲酒量の多い水準を扱った研究のほうでした。

面白いのは、酒の種類で向きが違うと指摘されている点です。ワインはむしろ体重増加と逆向き、蒸留酒は正の関連。ここは観察研究の集まりなので、飲む人の生活全体の違いが混ざっている可能性が高い読み方になります。

適量の飲酒については、体重増加との関連が見られていません。

つまり「飲んだら太る」は、量を抜きにしては言えない。ここは安心していい部分です。

ただし、飲むと「食べる量」が増える

もう一つのメタ分析があります。22件の試験、約700人をまとめたものです。

やり方はこうです。アルコール飲料か、アルコールの入っていない飲み物を先に飲んでもらう。そのあと自由に食べてよい食事を出して、実際に食べた量を測る。

結果は、アルコールを飲んだ条件のほうが、食べ物から摂るエネルギーが平均343kJ(約82kcal)多い。

この82kcalは、何が増えたぶんなのか

これは「つまみが増えたぶん」です。

測られているのは、参加者が皿から取って口に入れた量。同じ食事を食べたときの吸収率や消化効率の話ではありません。

だから、こう読んでください。

読み方 正しいか
飲むと、食べる量が82kcalぶん増える これが正しい
同じ2,000kcalの食事が、飲むと2,082kcalぶん吸収される 違う
アルコールで消化効率が上がる この研究はそれを測っていない

もう一つ、同じ研究で分かったことがあります。

酒から摂ったエネルギーのぶん、食事を減らすという調整は起きていませんでした。酒を飲んだから主食を減らす、という自然な補正はかからない。酒のカロリーは、増えた食事の上にそのまま乗ります。

数えてみる

アルコールは1gあたり約7.1kcalです。糖質やタンパク質(4kcal)より高く、脂質(9kcal)より低い。

1日の消費が2,200kcalの人で考えます。酒なしの日の食事は2,000kcal。ここにビール500ml(5%・約200kcal)を1本足します。

足すだけなら、収まります。

kcal
食事 2,000
ビール1本 200
摂取の合計 2,200
消費 2,200

ちょうど釣り合います。赤字は消えますが、黒字にもなりません。1本飲んだこと自体で太るわけではない。

崩れるのは、そのあとです

飲むと、もう少し何かつまみたくなります。メタ分析が測っていたのは、この「もう少し」のぶんです。平均82kcal。酒そのものを足した総エネルギーでは、平均256kcal多くなっていました。

ここを足すと2,282kcalになり、初めて黒字に転じます。

摂取 収支
食事2,000+ビール1本 2,200 kcal ±0
そこに追加のつまみ82kcal 2,282 kcal 82kcalの黒字

分かれ目は、飲んだかどうかではありません。追加のつまみを足したかどうかです。

晩ごはんのおかずで晩酌を済ませて、そこで終われば2,200に収まります。ビールのあとにもう一品、を足すと超える。

効いているのは、酒そのものより「飲むと食べてしまう」ほうです。

「アルコールは吸収が違う」は、どこまで本当か

ここは補足です。吸収率の話ではありませんが、関連する現象が2つあります。

1つめ。アルコールのカロリーは、表示より少し目減りします。総説によると、エタノールは代謝の過程で熱として失われる割合が平均で約15%と、脂質や糖質より大きい。つまり体に残るぶんは7.1kcal/gより少し低くなります。この方向は、飲む側に有利です。

2つめ。飲んでいるあいだ、脂肪の燃焼が抑えられます。代謝測定室で24時間測った研究があります。エタノールを加えた条件でも、同じカロリー分を他の栄養素と置き換えた条件でも同じでした。24時間の脂質の酸化が31〜36%減っています。

体はアルコールを優先して処理するので、そのぶん脂肪を燃やす作業が後回しになる、という現象です。

ただし、これを「だから太る」とまでは言えません。有酸素運動の記事で書いたのと同じ理屈で、ある時間帯に何を燃やしていたかと、体脂肪が増えるかどうかは別だからです。帳尻は時間をかけて合います。

決めているのは、やはり総収支のほうです。

「厳禁」と言われる理由は、ここまでの合計にあります。ただし超えるかどうかを決めているのは追加の一品のほうで、飲んだら必ず太るわけではありません。

「太る酒」「太らない酒」の話

蒸留酒(焼酎、ウイスキー)は糖質がないので太らない、とよく言われます。

半分正しくて、半分違います。糖質がなくても、アルコール自体が1gあたり7kcalあります。そこは消えません。

酒 目安のkcal
ビール 500ml(5%) 約200
ハイボール 350ml(7%・無糖) 約110
日本酒 1合(180ml) 約190
ワイン グラス2杯(240ml) 約180
焼酎水割り(60ml・25%) 約80

差は「糖質があるかどうか」より、その一杯に入っている純アルコールの量でだいたい決まります。同じ量のアルコールを摂るなら、種類による差は大きくありません。

量の目安

厚生労働省の指針では、生活習慣病のリスクを高める量の目安が示されています。1日あたりの純アルコール量で、女性20g以上・男性40g以上。純アルコール20gはビール500ml(5%)に相当します。

これは「ここまで飲んでいい量」ではなく、超えるとリスクが上がる目安として示されたものです。体重の話でもありません。

持病のある人、服薬中の人、妊娠中・授乳中の人、体質的にアルコールを分解しにくい人へ。この記事の内容ではなく、主治医の指示に従ってください。飲まない人が飲む理由は、ここには何もありません。

代わりに、締めをやめる

酒を我慢するのと、つまみ側に手を入れるの。同じ「飲み会の夜」で比べます。

やること 削れるkcal つらさ
ビール2本を我慢して烏龍茶にする 約400 kcal 高い(場の空気もある)
飲んだうえで、締めのラーメンをやめる 約500 kcal 低い(もう満腹)
飲んだうえで、揚げ物の追加を1品やめる 約250 kcal 低い

削れる量は締めをやめるほうが大きくて、つらさは低い。

理由ははっきりしています。この記事で見たとおり、飲むと食べる量が増えるのは体の反応で、我慢で抑えるのは骨が折れる。一方、締めの1杯は満腹になってから追加するものなので、やめても失うものが少ない。

我慢の量を増やさずに削れる場所から先に取る。それだけです。

では、どうするか

  1. 締めの主食をやめる。ビール2本を我慢するより削れて、つらさは低い
  2. 抜くのではなく、数える。ビール1本=約200kcal+つまみの増加ぶん
  3. 飲む日を決めて、その日の昼を軽くしておく。酒のぶんは差し引かれないので、こちらで引く
  4. 飲んだ翌朝の体重を真に受けない。塩分と水分で1kg動きます
  5. 週単位で見る。1日の赤字が消えても、週の赤字が残っていれば結果は出ます

私は減量中、最初の1か月は完全に断ちました。

ただ、飲み会で自分だけ飲まないことのストレスのほうが大きかったです。行けば気を遣うし、行かなければ行かないで気になる。体重とは別のところで消耗していました。

そのあとは普通に参加して、飲むかわりに食べるものを見るように変えました。追加のつまみを頼まないことと、締めをやめること。この2つだけで、ペースは変わりませんでした。

まとめ

  • 系統的レビューでは、適量の飲酒と体重増加の関連は確認されていない
  • 関連が出ているのは主に多量飲酒(1日2〜3杯超)のほう
  • 22研究のメタ分析では、飲酒した日は食事からのエネルギーが約82kcal多かった
  • 酒のぶんを食事で減らす調整は起きていない。上乗せされる
  • 食事2,000+ビール1本なら、消費2,200にちょうど収まる。飲んだこと自体では超えない
  • 超えるのは、そのあとに追加のつまみを足したとき

厳禁ではなく、追加の一品を足さないだけです。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 系統的レビューAlcohol consumption and body weight: a systematic review. Nutrition Reviews. 2011;69(8):419-431doi:10.1111/j.1753-4887.2011.00403.x飲酒と体重の関係を扱った31件の研究を集めた系統的レビュー。飲酒量と体重増加の正の関連を一貫して確認できたとはしていない。関連が報告されているのは主に**飲酒量の多い水準**を扱った研究で、適量の飲酒については体重増加との関連が見られないとしている。**酒の種類で向きが違う点も指摘されており、ワインはむしろ防御的、蒸留酒は正の関連。**多量飲酒の具体的な線は原典に示されていない。
  2. 系統的レビューEffect of alcohol consumption on food energy intake: a systematic review and meta-analysis. British Journal of Nutrition. 2019doi:10.1017/s000711451800367722件のクロスオーバー試験・ランダム化比較試験、約700人を集めた系統的レビュー(うち12件をメタ分析)。アルコール飲料を飲んだあと自由に食べてよい条件で、実際に食べた量を測っている。アルコールを飲んだ条件では、飲まない条件に比べて食べ物から摂るエネルギーが平均343kJ(約82kcal)多かった。**酒そのものを含めた総エネルギーでは約256kcal多い。**測っているのは食べた量であって、吸収率や消化効率ではない。酒から摂ったエネルギーのぶん食事を減らすという調整も起きていなかった。著者らは一般化できる範囲を18〜37歳に限っている。
  3. ヒト実験The Effect of Ethanol on Fat Storage in Healthy Subjects. New England Journal of Medicine. 1992doi:10.1056/nejm199204093261503健康な人を代謝測定室に入れ、24時間の栄養素の酸化量を測った研究。エタノールを追加した条件でも、同じカロリー分を他の栄養素と置き換えた条件でも、24時間の脂質の酸化が31〜36%減った。ただしこれはアルコールが代謝されている時間帯に起きる現象で、体重が増えるかどうかは別に総収支で決まる。
  4. 総説Role of substrate utilization and thermogenesis on body-weight control with particular reference to alcohol. Proceedings of the Nutrition Societydoi:10.1017/s0029665100000744アルコールのエネルギーの扱われ方についての総説。エタノールは1gあたり約7.1kcalのエネルギーを持つが、代謝の過程で熱として失われる割合が平均して約15%と、脂質や糖質より大きい。つまり表示上のカロリーより体に残る分はやや少なくなる。
  5. ガイドライン健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(厚生労働省)厚生労働省が示した飲酒の指針。生活習慣病のリスクを高める量の目安として、1日あたりの純アルコール量が女性20g以上・男性40g以上とされている。純アルコール20gはビール500ml(5%)に相当する。これは「飲んでよい量」ではなく、リスクが上がる目安として示されたもの。