プロテインは腎臓に悪いのか

結論

腎臓に病気のない成人では、たんぱく質の摂取量を増やしても腎機能の変化に差は出ていない。摂取後に濾過量が上がるのは正常な調節と考えられている。ただし腎臓に持病がある場合は別の話。

「プロテインを飲みすぎると腎臓を壊す」。

減量中にたんぱく質を増やそうとすると、必ず出てくる話です。対象を分けると、答えがはっきりします。

腎臓に病気のない成人では

腎臓に病気のない成人を対象に、たんぱく質の摂取量を比べたランダム化試験を集めたメタ分析があります。28本・1,358人を解析したものです。

結果は2段階で読みます。

測ったもの 結果
介入後の糸球体濾過量 高たんぱく群のほうが高い
濾過量の変化量 差はなかった

上の行だけを見ると「腎臓に負担がかかっている」と読めます。ただし変化量で比べると差が消えました。

著者らは、健康な腎臓の機能の範囲内で起きる正常な調節と考えられるとしています。

より新しいメタ分析でも、同じ向きの結果でした。推算濾過量は上がるものの、腎障害を示す生化学的な所見は一貫して見られなかったとされています。

「濾過量が上がる」をどう読むか

ここが誤解の入り口です。

正しい読み方 違う読み方
入ってきた量に合わせて処理量が増えた 腎臓が酷使されている
健康な腎臓の調節の範囲内 将来の腎臓病につながる
腎障害の所見は見られていない 数値が上がった=異常

食べた量が増えれば、処理する量も増えます。それ自体は故障ではありません。

腎臓に持病がある場合は、別の話

ここは分けて書く必要があります。

すでに腎機能が落ちている方では、たんぱく質の量が治療上の管理項目になります。上の研究は「病気のない成人」が対象なので、そのまま当てはめられません。

健診で腎機能の指摘を受けた方、透析を受けている方、糖尿病性腎症のある方。必ず主治医の指示に従ってください。

そもそも、上限は意外と低い

「飲みすぎ」を心配する前に、どこまでが必要量かを見ておきます。

49研究・1,863人のメタ分析では、1日あたり体重1kgにつき約1.6gを超えると、それ以上増やしても除脂肪量の上乗せは見られませんでした。

体重 目安
60 kg 約 96 g
70 kg 約 112 g
80 kg 約 128 g

体重70kgで112g。これを大きく超えて飲む理由が、そもそもありません。

代わりに、食事から数えてみる

プロテインを足す前に、食事でどこまで届いているかを数えると、必要な量が見えます。

食品 たんぱく質
鶏むね肉 100g 約 23 g
卵 1個 約 6 g
納豆 1パック 約 8 g
木綿豆腐 1/2丁 約 10 g
ごはん 1杯 約 4 g

普通の食事で60〜80gには届きます。残りの30〜50gを埋める道具と考えると、量の見当が付きます。

飲む時間は気にしなくてかまいません。合計のほうを見てください。

では、どうするか

  1. 腎臓に持病がない場合、体重1kgあたり1.6g程度までは心配の対象になっていません
  2. まず食事から数える。足りない分だけを補うと、飲みすぎになりません
  3. 健診で腎機能の指摘を受けたことがあるなら、主治医に相談してから増やす
  4. 水分は普通に摂る。たんぱく質が増えれば、処理に使う水も増えます
  5. 体調に変化があれば、自己判断せず受診してください

まとめ

  • 腎臓に病気のない成人28試験・1,358人の解析で、腎機能の変化に差はなかった
  • 摂取後に濾過量が上がるのは、健康な腎臓の正常な調節と考えられている
  • より新しい解析でも、腎障害を示す所見は一貫して見られなかった
  • 必要量の目安は体重1kgあたり1.6g程度。それ以上の上乗せは確認されていない
  • 腎臓に持病がある場合は別の話。主治医の指示が優先されます

病気のない人が目安の範囲で摂るぶんには、心配する根拠は見当たりません。

出典

この記事を書くために当たった研究です。同じ「出典あり」でも重みは違うので、どういう種類の研究かを1件ずつ添えました。 メタ分析やRCTは因果を言える設計、観察研究や数理モデルはそこまで言えません。

  1. 系統的レビューChanges in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis. Journal of Nutrition. 2018doi:10.1093/jn/nxy197腎臓に病気のない成人を対象に、たんぱく質の摂取量が多い場合と少ない(または通常の)場合を比べたランダム化試験を集めたメタ分析。28本・1,358人を解析した。介入後の糸球体濾過量は高たんぱく群のほうが高かったが、変化量で比べると差はなかった。健康な腎臓の機能の範囲内で起きる正常な調節と考えられるとしている。
  2. 系統的レビューEffects of High-Protein Diets on Renal Function and Body Composition in Adults Without Chronic Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomised Trialsdoi:10.1111/dom.70996慢性腎臓病のない成人を対象にした、より新しいランダム化試験のメタ分析。高たんぱく食で推算糸球体濾過量は上がるが、腎障害を示す生化学的な所見は一貫して見られなかったとしている。
  3. 系統的レビューA systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. British Journal of Sports Medicine. 2018doi:10.1136/bjsports-2017-09760849研究・1,863人のメタ分析。1日あたり体重1kgにつき約1.6gを超えると、それ以上の上乗せは見られなかった。必要量の上限の目安になる。